「知識や技術だけでなくやり遂げる力を卒園までに身に つける教育」
国際子ども研究所 飯田 和也
幼児期のおわりまで子どもの発達の姿として身につける教育が出来たかを点検・評価するうえで参照としたいのが幼稚園教育要領の改訂の方向性です。
幼稚園教育要領改訂と保育所保育指針改定の方向性を受けて認定こども園教育・保育要領の改訂内容に反映させるといわれるのが幼児期の終わりまでに身につけてほしい姿です。
小学校の各教科等との接続のあり方として保育と教育を考える上で参考にしなければなりません。
これら改定のキィーワードの一つが幼児期に育てたい資質・能力三つの柱「知識・技能の基礎」「思考力・判断力・表現力等の基礎」『学びに向かう力・人間性等』を参照します。
さらに最後までやり遂げる力や新しい事にチャレンジする能力も育てる上で必要です。これらは五領域の枠組みのため五領域は継続します。
保育の中で上にあげたキィーワードを具体的に示し・どう発達支援するかが保育の質の高さとして教育に求められます。
今まで『ねらい』の説明で卒園までに身につける心情・意欲・態度で上手でなくていいと共通しています。
教育とは、発見は自分で見つける主体性、学ぶ意欲と、社会の多様な変化に対応でき困難を乗り切る能力を身につけることに結びつきます。
養護に包まれて教育があるという考えを取り入れ改定内容を捉えて一人ひとりの発達を見つけ、卒園までに三つの柱などとやり遂げる力を保障する事例の一つとして次にまとめました。
乳幼児が〇〇した時、そのままでいいよ・上手にできなくてもいいよ、と受け入れられた時愛される感覚を味わいます・・そして、〇〇できるようになったねといわれほめられた時、そこで出来た・やれた体験から自分には出来る能力があると自覚でき、さらには自信に結びつき、一つの事をやり遂げる力になります。
卒園までに身につけ世界に通用する教育が求められます。
このような温かい触れ合いを友達や先生から言われたらどんなにうれしいか、体感させる教育がやり遂げる力に結びつくことを理解して、先生と言われる人は指導計画立案や実践したいものです。
これからの保育園・幼稚園・子ども園の教育にやり遂げる能力を身につける教育をしているか点検・評価が求められ、それが小学校への連携として学校の教師も理解していなければなりません。
例えば、合奏の場面で木琴の音がピアノの伴奏になかなか正しく合わすことが出来なくて悔しがっている子どもたちがいました。「最初はきちんとピアノに合わなくてもいいよ」とまず受入れました。そして何度も子ども同士の音合わせでお互い注意し、〇〇くん上手になったねと練習でほめている姿を認め、笑顔で見守り、テンポが違っても文句を言いませんでした。
子どもたちに木琴を叩く時の約束として「優しく叩いてね。きれいな音になるからね」「自分が木琴を叩く前は決して音を出さないでね」といいました。本番の数日前に「先生、涙が出そうになったよ。
それは『始まる前に音を出さない事・優しく叩く事』の約束を守ったから全員が揃ってきれいな音が出来て素晴らしいね。」と共感してほめました。
発表会当日は全員がやり遂げたという練習の成果により心が一つになり、感激の大きな拍手をもらい自信を持った姿になりました。
先生から失敗してもいいと受入れられ、友達から認められ・ほめられ、愛のある雰囲気の中で一緒になって一つのものを出来るようになり、全員で合奏が出来た体験によって音楽の知識と技術を獲得しただけでなく自分には能力が出来たという感覚、自信がつきやり遂げたという実感を持てた教育の一場面と言えます。
ひらがなを書く場面で「あいうえお」を書かせようと熱心に指導するが書く意欲に結びつきません。それは「あ」を始めて書く子には書きづらい文字です。
意欲に結びつくには、書いた文字に対して「最初は上手にかけなくてもいいよ」「失敗してもいいよ」と書いた形を受入れます。
子どもは自分で書いた文字を受入れられ・愛された感覚に結びつきます。次に、この前書いた「あ」より横棒がしっかり書けたねと具体的にほめます。失敗している個所は厳しく指摘しません。
そして、今度はたての書き方がきれいだねとほめます。そして、三回目以降で「じっくり我慢して「あ」が書けるようになったね」とほめます。このように『あ』をかけるようになるまで達成した喜びを味あわせる事で自信を持ち生き抜く力の基礎に結びつきます。
ここで留意する事はひらがなを書くことが困難な文字が多いがカタカナの『ア』とか『フ』『ラ』『レ』など子どもにとって書きやすいことを利用して文字を書けたという自信をつけることで劣等感を与えない愛情です。
そして書きたいという意欲に結びつけるように温かい雰囲気をつくること。「かけるようになった事をほめ」『書き上げる体験を見つけ』親、友達、先生の愛からやり遂げる力と自信を与えられることです。
年中児は全員が紙飛行機を上手に折ることは出来ません。友達が紙飛行機を折り飛ばす姿を見て折って飛ばしたくなり折っていました。
『此れでいい』と聴いてきます。完全でないが飛ぶ形に近くなっているのを認めて『それでいいよ』ときれいに折れていないが文句を言わないで受入れました。自分で折った紙飛行機を飛ばしました。
きれいには飛ばないがひらひらと飛びました。自分で折ったのを満足そうに何度も飛ばすのですがバラバラとなり落ちてしまいました。
隣の子に「〇〇チャンどう折るの』と聴いて再び折ると隣の子に「ここ上手だね」と言われてニコッとして飛ばしました。前よりか少し飛びましたが友達のようには飛びませんでした。
何度も飛ばしながら友達と一緒に飛ばすときに『まね』をするのでした。又、バラバラになり折りかたを気付き、投げ方を見つけて最初のときに比べると高く・長く・遠くまで飛ぶのを見て『飛んだ・飛んだ、見て』と大喜びする姿になりました。
紙飛行機が折れた、飛ばした、出来た、がんばった、折る知識と技術だけでなくやり遂げたという笑顔が印象的でした。
最初は失敗しても大丈夫・下手でもいい、と言う愛される体験が社会で困難に出会っても乗り切る力となります。
友達にほめられる体験からその子を真似したくなる関係が出来、自分には能力があると自覚し自信を持たせてくれる時と場が子どもたちの周囲にはあります。
幼児教育は知識と技術を身につけさせるだけでなく、最後まで一つの事をやり遂げる能力を身につける温かい雰囲気の教育がこれからの幼児教育には求められます。
乳幼児が出来たと言うサインを見つけたとき、上手にやらせるのでなく失敗するのが当たり前、多くを望まないでひとつでいいと認めることが最初といえます。
このときに愛されていると体感させる温かい愛のある雰囲気が求められます。愛のある保育者の態度により保育室・教室で愛されていると感じることでこの教室にいたいという意欲になります。
意欲を持つことでさらにもっとがんばろうとなり失敗を恐れないで持続し忍耐となりやり遂げます。
幼児期に「やり遂げる体験」を見つけ・励まし、慰め、共感などで資質・能力「知識・技能」「思考・判断・表現力」『学びに向かう力・人間性』とチャレンジする力も気付かせ、たくさん愛してあげられる時と場の教育を作りたいですね。
幼稚園教育要領改訂・保育所保育指針改定・幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂を通して一人一人の発達を見つめる眼と幅広い支援が現場に求められています。
「養護に包まれて教育がある」と言う温かい愛のある雰囲気の中で困難に対処する教育場面、遊びを通して『主体性・社会の多様な変化に対応できる力』を総合的な指導の事例を現場から取り上げ指導計画に結びつけ、さらには子育て支援に役立てる事が日本の幼児教育に必要です。
次回 保育の基本195は 教育は知識・技術・思考力等の他にチャレンジを育てる事で生き抜く能力を卒園まで身につける事例です。