保育の基本 95  「初めての参観日の保育」

NO IMAGE

保育の基本 95  「初めての参観日の保育」

                                 飯田 和也

 

 新人として始めて参観日を迎えるため、そして参観日当日の実践までをまとめました。

 前日まで日案「部分案」などの立案と机やいすの配置、教材の工夫、どのように保護者に話したらいいか、懇談会がある参観日であれば四月からの子どもの姿をどのように伝えたらいいか、不安なことが一杯でぐっすり眠ることが少ない毎日が続く緊張の日々といえます。

 前日に先輩から日案のチェックを受けたとき、導入や発達支援のための言葉を具体的に記入することとか、 さらに環境構成を工夫するといいと指摘をうけ、自分なりに書いたが出来ていなかったことで悔し涙を出している新人でした。

 

 そのあと、園長として「初めての参観日は多くのことを要求しないでいいよ、失敗するのが当たり前、 上手に保育を見せようとしないでいい」とアドバイスをしました。

 

当日の朝、当番の仕事として廊下をほうきで掃いていたので、今、一番不安なピアノを練習しなさい、後の掃除は園長に任せてと伝えてピアノの練習をさせ、その後、日案を見ると、長い文章や具体的に働きかけが良くなっているところにハートマークを記入しました。

 

 参観が始まる前に「今日のポイントは、笑顔を親と子どもに見せること、そして、親に四月からの発達をひとつでいいからつたえなさい、 子どもと遊ぶだけでなくクラスに貼ってある絵や友達とのかかわり方が変ったことなど、少しでいいからできるだけ多くの親と話しなさい。

 

 帰るときには一斉に帰るから発達を伝えることができません。この伝えるチャンスを活かすことで、母親はここまで発達を見てくれる先生と出会ったという喜びとなるからね」と助言をしました。

 導入は園長が話すので温かい笑顔で愛のある雰囲気を出してあげてねと言って始まりました。参観が始まる前に保護者に対して「今日は全員が笑顔を見せ愛のある温かい雰囲気を一緒につくって、子どもを授かった喜びを味わいましょう。それには心から子どもを可愛いとおもって見つめてあげてください。」といった挨拶をしました。

自分の一番得意な保育から入りなさいということで「手遊び 頭・ 肩・ ひざ・ぽんのバージョン」から保育が始まったが緊張のために声は上ずり、のどはカラカラ、目は点といった状況でした。そして、何とか第一段階の導入が終わり 子どもたちに「 ・・かっこいい」と褒めることもできました。

 

 次に、「朝の歌」「こうこけこっこ」を歌わせるとピアノも失敗しないで弾いて「みんな上手に元気良くお母さんの前で歌えて○」と言ったとたんM先生も大丸・また今日も花丸、」といった声が子どもたちから上がりました。このような温かい雰囲気が流れお母さん方はにこにこの笑顔と拍手が沸きました。

 

 次の親子の時計製作では、お母さんの顔を子どもが描き、子どもの顔をお母さんが描くという場面となり、「お母さんの顔見て目が似てる、良く描けたね」とか「見て・見て、○○チャンそっくり」といった具体的なほめ方が出来ていました。

 

 そこで近くに寄っていって「ほめた後、拍手と言って盛り上げるように」と助言もしました。温かい愛のある雰囲気にするには、保育者のクラスの空間を演出することも大切といえます。そして、親子で造った紙時計と親子の顔をのりで貼ったとき、一人ひとりの完成したものを拍手で認め、褒めあい、部屋に飾りました。

 最後に「子どもを抱いてください。みんなはお母さんのほっぺにチューして」と言うと、親子で抱き合い子どもからのチューをほっぺに受けるおかあさん方でした。 

 母親から「これで明日から頑張れるわ」と子どもをぎゅーと抱きしめて懇談会に進みました。

 クラス懇談会で担任から「新人ですがよろしくお願いします。四月から発達したことや今後の課題を話し、一人ひとりに参観の感想と家庭での様子を話し合いたいと思います」

 

 最初の母親から「新人で心配でしたが、今日子どもたちにほめられている場を見て安心しました。」と言う保護者の言葉がありました。そこで、「新人で子どもにほめられている場は、この先生が笑顔で明るい態度とほめ上手だからです。ほめられて良かったね、感想は」と新人に言葉を向けると、「言葉が全く出なくて感極まり泣き始めました」保護者の前で泣く場面となり、全員がまた、もらい泣きとなり温かい雰囲気に包まれた懇談会が始まりました。

 さらに、「私は○○の親ですが、この子と歳が離れた長女と同じ年頃の先生です。どんな先生かと思いました。子どもたちにほめられ温かい雰囲気のクラスを見てうれしかったです。これから娘のように見守りたい」と言う言葉をかけると又、全員の前で泣きました。

 それを見て多くのお母さんも泣くという場面となりました。反省会では、「がちがちにあがってしまい、失敗しました。しかし、子どもたちやお母さんからほめられてうれしくなり感極まり、何もいえなくて涙が出ました」そこで「貴女は幸せだよ、全員のお母さんに温かい雰囲気を認められたこと、子どもにほめられる姿を見せることが出来た幸せ、一生の宝物ができたね」と言うとニコッと笑顔を出している姿がありました。

 

 改善として、日案「部分案」を具体的な環境構成や援助も親子に判る言葉を記入すること、ピアノの伴奏を毎日練習すること、製作の指示と説明のときにお母さんや子どもにはっきりと具体的にわかる教材と示し方が課題と言うことも出ました。

 しかし、保育者として初めての参観日を子どもや親から愛される姿を見せることができたのもクラス全体が温かい愛のある雰囲気があったからです。

 これは園の方針として子どもが子どもをほめることを理解し「ほめること、そして、共感する保育の大切さ」をこれからも実践して欲しいと伝えました。

飯田和也の「保育の基本」カテゴリの最新記事