身体的・知的・社会的・情緒的・道徳的発達理解について
飯田 和也
新人に発達支援を幅広く捉え・正しく点検・評価させることが園長・主任に求められています。養成校や大学では、発達支援についてほとんど学習していない現状です。乳幼児の発達を捉え、保育者として子どもに発達を気づかせる発達の支援《援助》の中身を理解させ、点検・評価でき、そして次への改善に結び付けられる新人を育てることが保育の質を高めることになります。
新人は先生と言われると自分はすべてを知っている、何でも上手にしなければならない、教えるのが先生と言う意気込みで、クラスの子どもたちに保育者一人だけで教育しなければならないと思って、子どもたちに触れ合っていることは間違いと言うことを理解させることから園長・主任は始めなければならない。
園には多くの先生がいること、そして、先生がいないときでも子ども同士のかかわりの中で様々な発達が促され、身につけているのが保育現場といえます。五領域で発達を偏らないで捉えて実践をする時、保育者主導でなく子ども同士のかかわりから様々な刺激を得て身体・知的・社会・情緒・道徳的発達があることを新人は理解していません。しかし、新人は大人が教え込むのが教育、子ども同士では何も身につくことがないという考えが見られます。
子ども同士の発達を理解していないと発達支援を自己点検・自己評価する時に、子ども同士のかかわり、言葉のやり取り、ルールについて、物を大切にし、また壊している事、喧嘩している等が起きて様々な刺激し合って身につけていることを見落とすことになります。
新人は、子どもの姿を見る時に[ゆとり]がなく自分の経験、育った環境、受けた教育、保育実習した体験などの狭い観察しかできません。新人を育てる時に、客観的資料として保育所保育指針を参考にして自分の園は発達支援をするとき、子ども同士の発達特性を重要にしている事を伝えることも一つと思います。
これらは日案の作成ができていないと新人は援助欄に立案がなく、発達支援を実践する時に上手にさせなければならない、どのように働きかけて良いか具体的に把握できなくおろおろしている実態です。
日案作成の時に園長・主任は、子ども同士のかかわりにおいても発達していることを把握させるヒントをすこしでも与えることで新人は育ち、自己点検・評価する糸口になります。
保育所保育指針第二章 子どもの発達の特性において、子ども同士の発達で身体的「身のこなし・手先の発達など」知的「言葉理解と発語・聴く力・見る力・触る力・模倣する力など」社会的「友だちとかかわる力・周囲にかかわる力など」情緒的「泣く・笑う・怒る・嬉しいなど様々な情緒の分化と安定」道徳「人と合わせる力や思いやりの力」を簡単に理解して発達支援をしていることを新人に伝えたいものです。
発達支援のための子ども同士の発達を会得することで具体的な援助が立案され、共感・問いかけ・見守り・励まし・慰め・助言・指示等が身につきます。
しかし、このような発達のための援助の視点を理解していないと反省の欄が具体的な記述でない感想文、上手に出来た・出来ないという狭い点検・評価になります。大切なことは、子どもの発達「困難を乗り切る力」や自分から○○する主体性を身につけたかどうかを点検・評価できません。発達支援《援助》を具体的に立案して点検・評価出来る新人を育てる事が保育の質を高める事に結びつきます。
保育の質を高める点検・評価には、新人はクラス全員の個人記録を作成することから始まります。一人ひとりの発達を五領域「健康・人間関係・環境・言葉・表現」を捉えて個人記録を作成させます。この健康では「健康な心と身体がどのように育ち、自ら健康で安全な生活をしているか」を入園式当日、その後の数日に自分で身のこなし、怪我や病気にならないような態度をしているかを記録します。
人間関係では「他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力をもっているか」を入園式のころに、自分ひとりの行動だけか、人との交わりを求めているか、相手と協調した姿がどのようかを記録します。
環境では、「周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持ってかかわり、それらを生活に取り入れる力を持っているか」を入園式後の数週間にわたり、音をきいたり、物を見たり、おもちゃや道具に触ったり、園庭に咲いているチューリップやたんぽぽを見たり、匂いをかいだり、様々な遊具に興味を持って遊んでいるかを記録します。
言葉では、「経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力をもつているか」を入園式後の数週間の中で、自分から{おはよう・さようなら}の挨拶をしたり、先生の話をじっと聴いたり、返事を言ったり、人とのやり取りがどのようかを記録します。
表現では、「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力と創造性があるか」を記録します。桜がきれい、赤いチューリップがきれいと言う。水が冷たいと表現したり、曲に合わせてフォークダンスを真似して踊り、さらには絵では自分なりに表現して能力があることを記録します。
自分の保育実践の点検・評価をして改善に結びつけるためには、このような五領域と子どもの発達特性を会得する方法を自分の園の方針として見つけるのが園長・主任の役割となります。