小学校一年生問題の点検・評価、改善

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小学校一年生問題の点検・評価、改善

小1問題の点検・評価、改善    元名古屋柳城短大教授 国際こども研究所   飯田 和也

教育の世界で、小学校一年生になった生徒が教室でじっとしておれない・立ち上がる・うろうろする・話を聞く態度ができていない行為・集中力・持続力・忍耐力・調整力などが身についていないために教室の中で問題行動になっています。

今回、この問題について五つの視点から点検・評価し改善に結び付けたいと考察しました。

1 小学校一年生担任の教育の偏った考えを点検し改善へ

2 小学校校長以下全員が幼児教育の発達の方向性を重視した教育の在り方を認識しなおすこと

3 親の教育への無理解が学校や地域社会に影響を与えていても自己中心的な生活態度「親が主語で子どもが主語になっていない」態度をしている

4 幼児期の教育体験の違いとしてこども園・保育園・幼稚園の教育の多様性からくる発達の違い

5発達を援助する小学校の理念・方針を保護者にわかる言葉で丁寧に優しく説明していない実情などから問題行動が生じると考察される。

 

原因と対応に参考となるように少しまとめてみたいと思います。

 

原因

A 子どもの資質と能力、育った環境からの影響は、こども園・保育園・幼稚園の多様な教育環境の中で子どもの資質と能力の個人差が学校に入学してから現れることは当然です。

  • 子ども自身の言葉の能力差の問題「発語、認識力など」・行動の偏り「忍耐力、状況判断が弱い、表現力が偏っている」など資質と能力の問題が見られます。
  • 幼児期の教育環境の中で、この子は問題児というレッテルを貼られることで周囲が悪い子として決めつけ、いいところを理解されなくて悪い行動だけを判断される場合があります。
  • 入学前の「就学時での対応」によりレッテルの張られ方により問題行動という見方になって正しくとらえられない場合も見られます。さらに、ドクターの〇〇診断で母親と教育者に解かる言葉の説明と具体的な対応が少ないため、母親や先生が正しい対応をできないことで勝手な行動をしても、この子は〇〇と受け入れて放任や過保護のふれあいが続く場合があります。
  • 育った家庭環境 本来は、落ち着いて行動する資質と能力があるにも関わらず、親の子どもへの無理解・無関心から能力を信じられていないため過保護・過干渉・放任など育児に問題な体験があり影響を受け入れてしまう場合があります。
  •  外国籍で育った環境として日本語が習得していなくてルール・約束などが正しく獲得されていないために問題行動を起こしていると思われる場合があります。
  • 幼稚園・保育園・こども園で受けた教育環境の影響がみられる場合があります。幼児教育で知識と技術が重視されすぎて発達観三つの柱の三つ目の非認知能力「我慢して最後までやり遂げる力・挑戦・思いやり・自尊心」などの発達の方向性を与えられた支援ができていなく、行儀よく〇〇しなければならないといった昔の教育経験を重視した方針の教育経験を体験して、非認知力を育てられなかったために忍耐力や人を愛する姿勢が持てなかった行動からくる場合があります。
  • 特に、集団の場において、受け入れられる、愛される、認められるといった体験が少ない場合が影響あります。
  • 地域で育った環境 地域の人々に愛されていると感じられない親子の教育経験、 社会体験で集団登校や地域での行事から縦のつながりや横のつながりが少なくて地域でなじめないままに一年生に入学する場合があります。
  • 生活している場所に子どもがいない、少ない、どのように一年生になったら登校していいか、学校での生活することに不安を抱いたまま入学することで,神経的に不安の状態で入学して行動が自信をもってできない場合が見られます。住んでいる地域で仲間がいない、親の友達が少ない、日本の風俗・習慣・文化が理解できないために引きこもってしまい地域の中でかかわりが少ないためという原因も見られます。
  • 小学校での対応 四月に担任が一斉に全員を同じように資質と能力を伸ばそうという教育が問題といえます。到達目標のような全員を〇〇までできる教育が望ましいという教育方法を押し付ける場合が見られます。
  • 小学校の校長や先生方が幼児教育は、ねらいと内容で保育は成り立っていることを理解しない対応が見られます。その日に知識と技術を獲得することが重要という教育でなく、失敗してもいい、間違ってもいいという発達の方向性を校長と担任は理解して対応することが求められます。

 

B 幼児教育で受けた教育が影響されるもの

人に愛されるから人の話をじっと聞くことが出来る教育経験が乏しい

入学して初めての新しい集団教育が始まったとき、一年生の担任が全員初めての時・場だから「失敗してもいいよ・間違ってもいいよ・一つできればいいよ」上手にできるようになるにはいか月先でいいよという言葉をかけることで一年生は安心してくらすに入ることができるはずです。

ここで一年生は自分はクラスの先生から愛されている・認められている・受け入れられているという感覚になって安心できます。一年生の先生に入学して一・二か月を見守る時期にしてほしいものです。

その間に、子どもの発達のとらえ方である資質と能力の三つ、1 知識と技能、2 思考力・判断力・表現力、3 非認知能力である思いやり・忍耐・チャレンジなどがあります。

これらの三つの発達を理解し、園生活の中で体験する教育経験が影響されます。子どもが困った時に先生から受け入れられる教育経験が、相手の困ったときの立場になった行動ができるように結びつきます。

先生に絵が描けたときに、かけた喜びを与えられる、ひらがなが書けたときに上手でなくて名前が書けて良かったねと褒められる、友達が困っていたのを手伝ってあげたことを認められる、褒められたり、愛されている感覚になったときに先生のいうことを一生懸命聞く態度を示します。そこで愛されているから自分を愛する人の話が聞けることに結び付きクラスでは温かい愛の雰囲気となります。

これらは知識と技術を 獲得させる教育観、さらには、新しい発見や違いを判断し自分なりに表現する能を中心とする教育方法だけでなく、知能テストでは測ることができない非認知能力を大切にする教育方法を受けることで人とのかかわりが豊かになります。

 

幼児期から高校卒業までは、思考力・判断力・表現力が自覚でき自分なりに表現する資質と能力を育てられる教育経験も大切です。先生から押し付けられるのでなく自分で発見する、自分で違いを見つける、自分なりに相手に合わせて表現する主体性を体験できることです。

一年生の新しいクラスで最初に担任が親と子ともたちに約束をすることも重要で、約束を教えていなければ叱れないことも学校全体で最初に伝えているかが問われます。

子供や親に約束をしていなければ先生は叱れないということを伝えたいものです。

面白いことを見つけること、幼稚園・保育園・こども園の時と違った机や窓ガラスやトイレなどの違いを発見したり、大きさや友達の動きの違いを判断したり、今までの友達と違う声、動きを見つけ、自分も真似したり、違う表現をしてみたくなる体験が一年生になったとき気づき行動する場合が見られます。しかし、一年生は個人差が大きいために一斉の行動ができない場合が見られます。

先生だけでなく周囲の仲間から認められ褒められる教育経験、愛されているという体験により相手の心が理解できる教育体験が就学以前にあるかないかによって影響されます。

このように小学校に入学して問題行動を起こす子どもの資質と能力を捉えるための正しい情報を持って、一人一人の行動様式を点検・評価することが一年生の担任には求められます。

対応として、一人一人の家庭環境や幼児教育環境を把握して、問題行動の原因を探ります。家庭環境であれば保護者と育児環境と育児について愛され方や資質と能力の問題点を点検・評価して「受け入れ方」であれば家庭と協力して対応策を工夫します。

親が正しく子どもの資質と能力をとらえていない、例えば過大にできると評価しすぎて期待をもって触れ合うことで、子どもが頑張りすぎて最後につぶれてしまう場合が見られます。

多くの場合、学校側は親と子供に学校に入ったら守らなければならないことを「わかる言葉で優しく、丁寧に繰り返し伝え、守ったら親子を 褒めるという教育方法を伝えていることです。

実際は一度言ったきりで親に繰り返し伝える努力が見られないのが実態といえます。多くの保護者は、学校からの繰り返しの約束ごとや話し合うときがあれば不安が少なくなり、安心して子どもを送り出すことができます。

 

 

C  子ども自身の言葉や行動の偏り

子ども自身の言葉の理解と表現について、自分が置かれている状況判断が偏っていたり、判断不足であったりしてクラスのなかで表現することが集団から逸脱してしまうケースが見られます。

様々な要因として発達に遅れがあり、障害が見られ行動に偏りのある場合です。学校と家庭で具体的な場面に対して具体的に色・形・数・大きさ等、友だちの名前などわかる言葉で説明が必要になります。

特に、クラスの雰囲気に対して過敏なタイプや反対に鈍感な場合には行動に偏りがある場合が見られます。小学一年生の一学期は、担任がこどもを決めつけて、レッテルを張らないで見たいものです。就学のための診断書は参考になるが決めつけて援助を控えることといえます。

対応として クラスの中で言動を点検・評価するときに、理解できない行動、友達と乱暴な態度、自分勝手な行動ばかりを見つけて指導するのだけでなく、折り紙ができる、漫画の絵が見事に描く、人が言わなくても椅子を元に戻している、歌が好きといった目立たないところにも良いところがあることを先生や友達が見つけてクラスの中でいいところを言い合う時と場を作り認め合う温かい愛のある雰囲気を作ってお互いが受け入れあう教育その時に大切なことは、悪いところを言わないという約束の下、クラス全員がお互いにいいところを言い合う場です。

全員の子供たちが担任のいいところを言い合う時と同時に担任は一人一人のいいところをクラス全員の前で伝えて、温かい雰囲気作りができれば最高のクラスになります。こどもは環境を通して相互作用で発達する。という言葉のように全員が先生や友達から愛されている温かい雰囲気を体験できることでクラスの中に一緒に座っていたい、聞いていたい、見ていたいなど情緒が安定した生活ができます。

D就学相談でのあり方

園側から保護者へ、クラスの中での行動の事実を正しく伝えることです。一人の担任からだけでなく園長・主任・担当者が様々な場面での行動に対して事実を伝えることです。

その時に自分の意見が偏っている場合を無くすために複数の先生の観察した事実を客観的に記入して提案したいものです。

発達の事実として三つの柱を丁寧に分析し五歳児終了までに育ってほしい姿として「健康な心と体、自立心、共同性、道徳性・規範意識の芽生え、社会生活とのかかわり、思考力の芽生え、自然とのかかわり・生命尊重、数量・図形・文字などへの関心・感覚、言葉による伝えあい、豊かな感性と表現」等を分かりやすく伝えるのが教育者として専門性になります。

 

教育委員会・就学指導委員会から保護者へ学校

ドクターから保護者へ 診断と家庭での助言の在り方が園側にも保育に参考となることを伝えて共有することです。保護者は医者の言葉だから一番信じるという態度が強いと身近で接している保育者に伝わらない場合が見られます。

医者の助言を正しく把握して卒園の時に正しい子どもの姿を10の姿を記入できるような協力があって小学校一年生の一学期を乗り切る教育環境に結び付きます。

対応 保護者に就学に対しての正しい情報を具体的に伝えて信頼関係を確立するために、園側として入園から就学までの具体的な事実の資料を提示することから始めなければなりません。

特に、入園の一か月がどのようであったかを思い出させることが重要といえます。さらに小学校に発達を伝えるときに10の姿をできるだけ具体的に、いいところを工夫して記入して伝えることが重要です。母親がわが子の集団へのかかわりの原点を保育の終了時点で再確認することが偏らないことになります。

 

E育った環境

子どもが育った家庭環境の影響 親にすべてを受け入れ・認め・過保護で育てられてなんでも自分の思い通りになる環境のためわがままになっている場合。おもちゃや家庭で使うものは豊富にあるが大事にしないために好き放題な態度となる場合。

育てられ方が放任・無関心で育った環境の場合・自分ひとりでなんでもするが周囲の人の行動に合わすことをしないで,一見自立しているが友達とかかわらない場合等様々な環境が影響を受けていることを全員が把握したいものです。

 

外国籍で育った環境・日本語の理解が完全でなくルールを気づくことや守る体験が少なく、注意を受けても日本語を正しく理解できない環境、日本の社会の約束事を体験することが少ないため勝手な行動をする場合があります。

対応 育った環境で、落ち着いて行動できるために返事ができるだけでいい、食べる時の挨拶ができるだけでいい、ふらふらしないで食べることができればいい、トイレの使い方がきれいに使えるだけでいい、人に邪魔しなくて行動できればいい、静かに座って待っていることができればいいといった基本的な態度をできたときに具体的にほめること、認めることをすることで情緒が安定する場を多くすることが重要といえます。

 

F 幼稚園・こども園・保育園で受けた教育環境

小学校一年生の行動に左右されるのは、幼児教育の影響もあります。厳しく育った幼児教育・放任に近い幼児教育・過保護な幼児教育など様々な特徴があることを、学校は把握し小学一年の問題行動をしている一人ひとりの発達を点検・評価することです。

全員が同じ幼児教育で育って入学してこないということを学校側は理解して、個人差を把握したうえで問題行動をしているこどもを指導・配慮して実践してほしいものです。入学するまでに発達の姿は個人差があります。

各園の理念・方針、特徴(目立つこと)と特色「他園より優れていること」との違いを学校の担任や校長は理解して、問題といわれるこどもの家庭環境や育った教育環境の事実を把握することが客観的となって問題行動の理解と援助ができます。

 

対応 こども園・幼稚園・保育園のすべてが小学校に対して幼児教育は「発達の方向性としてねらい」という教育に対して到達目標ではなく発達の方向性として方法をとらえていて上手にさせることだけでないという中身について伝えること、

そして学校は小学校と違って到達させる教育でないことを理解して一年生を向かることを先生は認識していることです。

小学校の先生を担当する場合に幼児期の教育を教員養成校で確実に履修することが問題な一年生を作らない現場に結び付くことを確認することです。

地域で育った環境からの影響

地域の中で家族が認められなく、問題のこどもというレッテルを貼られて孤立している環境が見られる場合があります。隣近所から乱暴な子・悪い子・できない子等の差別を受けたり、無視されたりして人間関係が不安定になる場合もあります。

特に、人を信じられなくて家族で固まってしまい、周囲を受け入れないという行動のために集団行動に入れない場合・入りたくない気持ちの場合が見られます。

対応 誰でもいいところは一つあるということを地域の学校のリーダーが見つけて言い合う場を作るという方針を地域の集まり・祭り・行事などで作ることです。自分さえよければいい、自分の家の子だけ守られればいいという雰囲気を作るのでなく、住んでいるアパートとか地域の区長・班長・会長といったリーダーがまとめる役割を作ることです。

自分一人ではできないので地域の伝統とか方針「ありがとうを言い合う、また、笑顔で挨拶をする」などお互いが受け入れられ愛のある温かい雰囲気づくりをする努力を誰かが作ることで日本の教育はよくなるという信念を持つことです。

 

小学校で担任からの影響

一年生の四月は様々な幼稚園・保育園・こども園から集まっているため、各園ごとの幼児期のねらいと内容が異なって育った園の教育環境を理解することです。

ねらいのとらえ方が発達の方向性でなく指導したい内容といった理解の仕方が異なって教育を受けている場合が日本中で見られます。発達の方向性を校長や担任は把握して一学期はレッテルを貼らない教育観を理解してもらう事で対処する事といえます。

小1問題は小学校の教育方針として保育園・こども園・幼稚園の発達の方向性を認識することが必要といえます。一年生の一学期は、担任としてこどもたちは、新しい環境に対して失敗してもいい、出来なくても仕方ない、多くを望まないといったこども観、教育観を持って教育実践をすることが最も小1問題解消の一つになると思います。

 

多くの様々な問題が見つかりました。日本中で偏った地域もみられます、また素晴らしい教育環境の学校も見られます。多くの人の協力が必要な日本の将来と思われます。

参考にしていただければ幸いです。

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