小学校二年生の男児との触れ合いから考えさせられた事をまとめます。部屋の中で男児が家族の近くで絵を描く場面となりました。
「ポケモンの○○描く」と言ってノートに描き始めたが自分の思うような形にならなくて三回・四回と失敗した絵に鉛筆で×とし始めた。
そのとき『あ、鉛筆の持ち方上手だね』と言うと『びっくりしたようにこちらを見ました』そして『失敗しても工夫して描く力すごいね』「我慢できているじゃない」『この子筆圧もあって能力在るね」「集中力もすごいじゃない」『考えて描いて頭良いね』と
近くにいた母親とおばあちゃんに伝えると、その男児は途中で絵を描くことを辞めようとしていたが我慢して再び描き始めるのであった。
出会ったときに家族から初めての場では、緊張して口の中にはつばがたまるということでした。
そして、部屋に入ってくるや否や唾をいっぱいためて家族から「ティシュ・ティシュ」と言われ渡されて男児は口の中にティシュを詰め込む姿を示すのでありました。
家族からの相談は、このように新しい場面では緊張のためティシュを何枚も使ってつばがたまるという事、授業中寝っころがったり、椅子の上に立ってふざけて授業妨害をする、手がかかって大変、集中力や友達関係もうまくいっていないなど学校の先生たちも「集中力や落ち着きのないこと、ジッとしていない」など困っているという相談でした。
しかし、この場でこのように絵を描く事を熱心に集中し意欲を持ち、唾もためないで緊張しないで描いている姿を見て母親と祖母は家・学校と違う姿を見られて涙を出すのでした。
さらに自分がほめられている事を聴いていたこの子は自分から他の紙に絵を続けて描き始めました。そして、失敗しないでポケモンの△△を三つも描いて再度見せに来る姿があり、今まで自分から描こうとしない・勉強しない・自分で○○しなかった子の自発的な姿に家族はさらにびっくりした場面となったのでした。
なぜ、このような家庭や学校と違う態度になったかということです。それは初めての場で緊張しないためには、相手を受け入れる態度が大切ということです。
この子のそばにいるときに、この子どもを可愛いと思って受け入れて見つめると笑顔となり、子どもは受け入れられているとなります。そして、こちらに子どものいい所を見つけ共感しようとする姿勢があるとこのようにほめる場が多くなります。
しかし、何とかさせようとか・何かをやらせて上手にさせようとか伸ばそう・つばを出させなくしよう、我慢させようと言うふれあいではありません。出会ったときに様々な能力があることを信じて良さを見つけようとすると、子どもは瞬時にこの人は自分を受け入れてくれる人と判断し情緒が安定します。
自分が愛されることを感じることで心を開く事ができます。心を開くことで少しこの人の話を聞いてみようかとなり、人の話をジッと聞く態度が育つのでした。この場で失敗しても良いと解ると集中し工夫する力が湧いている態度でした。
今、上手でなくても、あなたには能力があること、描く力を持っている事、我慢してこの場にいる力があること、人の話を聞く態度があることを気づくことが出会いには必要と言えます。
発達を具体的に示し・説明する場を保障することで家族は安心します。周囲の大人には、この子には知的能力があること、しかし、集中することや落ち着きがない時を直すには、認め方・受け入れ方・ほめ方を工夫して欲しいと願わざるを得ません。
そして家庭でもほめること叱ることを丁寧に説明し、愛する態度で雰囲気を作ってあげ生きる喜びを与えてあげられたら自信を持つことができると思います。
園長 飯田 和也