保育の基本131 終わり「別れ」が愛されていたと感じた場面・愛していたと確認できた保育場面であればお互い温かい心が残る

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お別れ会でのふれあいから愛の大切さ

    誠和幼稚園 園長・東海学園大学客員教授 飯田 和也

 

 年長児の親子と園全員の保育者との最後のお別れ会での出来事から愛の大切さを教えられた事をまとめます。

 

 卒園児が在籍していた数年間の成長・発達の証であるスライドやビデオを見たり、楽しいゲームをしたり、食事をしたりして年長の担任の最後の別れの話になったときでした。

 

 舞台に立った担任の話を参加者全員が聴こうとすると、卒園児が一人二人と母親からカメラを借りて担任の姿を写そうとし始めました。

 すると次々と卒園児が母親からカメラを奪って担任の前に出てきて大好きな先生の最後の姿を写真に撮ろうとするのでした。担任が「私は、この年長の子どもたち・・・」とマイクを持って言おうとしたが声が聞き取れないほどの卒園児の興奮が始まるのでした。

 

 そこで担任は、子どもたちに対して「みんな先生の声が聞こえないので自分の席に戻ってくれる」と言うと全員がサッとカメラで先生を写そうとするのを止めて自分の席に戻るのでした。

 

「この先生が怖いからでは在りません。」

 

 この十人以上の卒園児が写したい欲望を途中で止め、静かに母親の座っているテーブルに戻る姿を見て園長として震えるほどの感動を覚えざるを得ませんでした。

 

 このようなお別れの場では先生の言う事をなかなか聞かないで最後の姿を自分の欲望だけで写真を撮ろうとする子どもたちが多いのが当たり前のようになっています。

 

 しかし、今年の年長組の全員の子どもたちは担任にどれだけ愛されているかと言う場面に出会いました。子どもたちには先生に愛されているから人の話をじっと聴く態度が育っている事、友達が写真を撮っているのにねたまないでサッと一斉に止めて自分の席に自分から戻る態度がありました。

 

 園内研修で愛されている雰囲気作りを保育のプロとして考慮する事の実践が出来ている証といえます。その後子どもたちから先生に感謝の花の贈呈があり終わりに近づいていきました。

 

 するとあるお母さんが「私は子どもから野に咲く花も草も今まで一本ももらった事がない」と言って周りのお母さんに話しながら先生方の退場を出口まで送ったのでした。

 

 そこである役員の提案で卒園児55名全員が退場口に集まるとガーベラ一本ずつを数人しか渡す事を知らない役員のお母さんから渡されました。

 

 子どもたちはお母さんに渡す事を解らないように後ろに一本一本を隠してそーと持って入場して「おかあさん・ありがとう」と渡す

 

 お母さんたちは思いがけない事・考えていなかった事・先ほどまで野に咲く花も草も渡されてもらった事がない母親を含めて大号泣の場となり、抱きしめ・うれし涙、感激の涙でわが子の大きくなった姿を抱きしめると子どもたちも母親の涙を見てさらに大声で「お母さん」と抱きつき温かい愛の雰囲気に包まれる別れの涙の饗宴で幕を閉じました。 涙・なみだ・・。

保育の基本131 終わり「別れ」が愛されていたと感じた場面・愛していたと確認できた保育場面であればお互い温かい心が残る

               東海学園大学 飯田 和也

 

 「終わりがよければ温かい心が残る」保育の基本の一つに卒園式や途中退園する親子との別れの時に、子どもやお母さんに心の基地となった感覚を与えられたか大変重要になります。

 親子との別れの時に子どもは先生と別れたくない、母親はわが子の出来なかったことを伸ばしてくれてありがたかった、もっと一緒に子育てをして欲しかったという思い・願いを与える事ができたか評価したいものです。

 

 母親は別れの時先生に言葉ではなかなか伝えられない感謝のことばや不満なことがあることを保育者として理解していなければなりません。全員が感謝される態度で終わり別れることが出来れば保育者冥利につきます。

 

 ことばが出なかったとき、オムツがなかなかはずせられなかった時、食べる時に偏食であった子、歩くのがやっとの子、泣いてばかりいた子が卒園の時や途中で退園しなければならなくなったときに大きく成長した事を確認できたり、発達した事を味わうと感謝する気持が湧いて感激し涙の別れとなります。

 

 しかし、喧嘩をしたときに自分の子どものほうが悪いとばかり批判し、相手の行動だけを受け入れ一方的に謝ってくださいと押し付けられ、連絡ノートに書かれること、この子は○○が悪いと決め付けられ言われて心に傷をつけられたいやな思い出を持って別れる母親も中にいることを謙虚に見直す事も別れの時には重要となります。

  

 しかし、多くの母親に涙・涙で別れることが多いと思います。例えば、卒園式で卒園児一人ひとりが親の前で思い出のことばでは親としてわが子が大きな声で言えるだろうかと心配して見守っていると「いつも送り迎えをしてくれておかあさん・ありがとう」と堂々といえた時、あ、言えた嬉しい、こんなにも成長したとどっと涙があふれてきます。

 

 何と言うのかと期待で待っていると「運動会のリレーで転んだけれど最後は一人抜かせられて嬉しかった」と自信を持った事をにこにこと言えたわが子の姿を見て、こんなにも強くなったのだ嬉しいと感激して涙・涙が出てきます。

 

 いつも子育てでは時間がなくて申し訳ないと思っていたのに「おいしいご飯をつくってくれておかあさん、ありがとう」と感謝の言葉を聞いたとき、この子は優しく育っていたのだと改めて感激して涙が湧いてきます。

 

 入園の時ことばが全く話せなかった子が大勢の人前でゆっくりと拙いことばで「お・か・あ・さん・あ・り・が・と・う」と言えた場面に出会うとき、母親としてことばが言えなかった子がしゃべった、ここまで大きくなった、育った,この子を授かって幸せと言う感覚が湧き、涙・涙となります。

 

 保育の基本として保護者に入園から卒園までを走馬灯のごとく成長・発達した事を思い出させる温かい愛のある雰囲気を演出して「堂々とした態度・背骨を伸ばした姿勢・はっきりした言葉・豊かな表情・笑顔で行動など発表する力を身につける教育」が大切となります。

 

 園児が愛されていると感じる保育として一人ひとりの発表できる能力を見つけ、母親に大好きだよ・○年間ありがとうと優しい気持を伝える態度が基本となります。それも自分なりに一生懸命伝える感謝の心を子どもと一緒に見つける眼が保育のプロと言えます。

 そして先生が一人ひとりのこれらの能力を信じる事です。

 

 卒園式の練習に対して緊張する子には少しずつできている事を気づかせ、自分には発表する能力があることを自覚させる事です。さらには友達の伝えている時にはじっと我慢して聞く態度が育っていることを思い切りほめて自覚させ、忍耐力がついたことを自信もたせることが発達支援のポイントです。

 

 それには保育の中で大きくなった事を五領域で偏らないで記録しどのような、発達支援をしたかを点検・評価する眼が保育のプロです。母親に対しては、母親としてわが子が幅ひろく大きくなったことを自分では見つける事ができなかったが、発達を気づかせてくれる・ここまで見てくれる先生と出あったという感覚にさせることです。

 

 そのためには、具体的に五領域で入園から卒園までの発達の中身を説明する事です。例えば、母親としてことばの遅れを気にしているので言葉についての身につけ方として具体的に教えてくれる先生が必要となります。

 

 また、言葉の発語だけでなくこの子は人間関係が敏感で優しさがあるので友達がこの子の拙い発語や身振りのサインを聴いてくれるから言葉が育ったのですよ、お母さんが人や物を大切にしているからそれをモデルと見て優しさが育ったから愛されて、そして話す事が伸びたのですよ。

 

 周りにこの子を愛している友達や先生がいたから言葉が伸びたのですよ。愛されていたからじっと我慢できていた事でねたまなく堂々たる態度を獲得できたのですよと伝える事といえます。

 

 卒園式の練習する保育実践として保育者が一人ひとりを深く愛する態度で接したかが重要になります。一人ひとりの発達である個性を見つける眼と発達を子どもに気づかせる保育と保護者に発達した事を文章で丁寧に伝える事で信頼関係が結ばれます。その発達を伝える場が卒園式と言う行事になります。

 

一人ひとりが母親に感謝の気持を伝える時、母親は大勢の友達やお客さんの前で大きな声で堂々とした態度で感謝の気持を伝える姿ができて、大きくなった・子どもを授かって良かったと小さかったときや入園の頃を思い出すと感激で涙となります。

 

又、一人ひとりの子どもたちが思い出のことばを大きな声で話すとき、感極まって涙を出す子どもがいてその子どもの涙を見てもらい泣きをする場面もあります。

 

 卒園式という別れの終わりが良ければ心に残る涙が落ちます。

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