誠和幼稚園 園長・東海学園大学客員教授 飯田 和也
年長児の親子と園全員の保育者との最後のお別れ会での出来事から愛の大切さを教えられた事をまとめます。
卒園児が在籍していた数年間の成長・発達の証であるスライドやビデオを見たり、楽しいゲームをしたり、食事をしたりして年長の担任の最後の別れの話になったときでした。
舞台に立った担任の話を参加者全員が聴こうとすると、卒園児が一人二人と母親からカメラを借りて担任の姿を写そうとし始めました。
すると次々と卒園児が母親からカメラを奪って担任の前に出てきて大好きな先生の最後の姿を写真に撮ろうとするのでした。担任が「私は、この年長の子どもたち・・・」とマイクを持って言おうとしたが声が聞き取れないほどの卒園児の興奮が始まるのでした。
そこで担任は、子どもたちに対して「みんな先生の声が聞こえないので自分の席に戻ってくれる」と言うと全員がサッとカメラで先生を写そうとするのを止めて自分の席に戻るのでした。
「この先生が怖いからでは在りません。」
この十人以上の卒園児が写したい欲望を途中で止め、静かに母親の座っているテーブルに戻る姿を見て園長として震えるほどの感動を覚えざるを得ませんでした。
このようなお別れの場では先生の言う事をなかなか聞かないで最後の姿を自分の欲望だけで写真を撮ろうとする子どもたちが多いのが当たり前のようになっています。
しかし、今年の年長組の全員の子どもたちは担任にどれだけ愛されているかと言う場面に出会いました。子どもたちには先生に愛されているから人の話をじっと聴く態度が育っている事、友達が写真を撮っているのにねたまないでサッと一斉に止めて自分の席に自分から戻る態度がありました。
園内研修で愛されている雰囲気作りを保育のプロとして考慮する事の実践が出来ている証といえます。その後子どもたちから先生に感謝の花の贈呈があり終わりに近づいていきました。
するとあるお母さんが「私は子どもから野に咲く花も草も今まで一本ももらった事がない」と言って周りのお母さんに話しながら先生方の退場を出口まで送ったのでした。
そこである役員の提案で卒園児55名全員が退場口に集まるとガーベラ一本ずつを数人しか渡す事を知らない役員のお母さんから渡されました。
子どもたちはお母さんに渡す事を解らないように後ろに一本一本を隠してそーと持って入場して「おかあさん・ありがとう」と渡すと
お母さんたちは思いがけない事・考えていなかった事・先ほどまで野に咲く花も草も渡されてもらった事がない母親を含めて大号泣の場となり、抱きしめ・うれし涙、感激の涙でわが子の大きくなった姿を抱きしめると子どもたちも母親の涙を見てさらに大声で「お母さん」と抱きつき温かい愛の雰囲気に包まれる別れの涙の饗宴で幕を閉じました。 涙・なみだ・・。