最後まで仲間の話に耳を傾ける愛の雰囲気

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最後まで仲間の話に耳を傾ける愛の雰囲気

 

 

 三月は、幼稚園・保育園・学校から卒園や卒業などで、次の始まりであるところに旅立って行きます。養護施設でも18歳になると同じように巣立って行きます。このような三月の別れの時に一人ひとりが困難に出会っても逃げないで乗り切る力を発揮して辛い事・悲しい事・いやなときに乗り切って欲しいと願わざるを得ません。

 

 しかし、先生・友達・指導員などの温かい愛に包まれて生活していた場から次に出会うところは子どもたちが考え・想像していた出来事をはるかに越えた困難な事が多くあるのも現実と思います。困難に出会ったとき入園の頃、入学の頃、入所の時を思い出して欲しいものです。

 

 入園や入所してきた時,母親と離れて不安となって、ことばでは言い表す事ができない悲しみ、悔しさ・辛さに出会い泣いていたことや苦しかったこと、切なかったときがありました。しかし、そのような出来事に出合った時に逃げることなく乗り切ったこともあったと思います。幼稚園・保育園・学校・施設で先生や友だちに愛されて過ごしたこともあったと思います。

 

 18歳になると残りたくても出なければならない、卒園しなければならないのが児童養護施設です。18歳になって卒園の時を迎えて、四歳から十八歳まで約五十人いる子どもたちの前で最後のお別れのことばを話さなければならない場面となりました。

 

 最後の時と言う事でスーツに着替え、友達や先生からお祝い・お別れのことばをもらい、いよいよ最後の一言と言う場面になりました。本人は正式な場と言う事で緊張してマイクを持った手が震えているようでした。なかなか最初のことばが出ません。幼い子や同級生は何を話すか一生懸命彼のマイクを持った姿を見つめていました。しかし、「え・・」といったきり声が出ません。そして舞台の前にいる担当者や子どもたちは固唾を呑んでまたじっと見つめました。

 

 小さな声で『みんな・・・ありがとう』といった後声が続きません。全員がさらにじっと次はなにを話すか我慢していました。それでも声が出ません。誰一人声も出しません、そして緊張している中、やっと『・・・友達と○○でき嬉しかった』と声が出ました。

 

 このような最後のあいさつを仲間が静かに見守り、聞く態度を私は舞台の袖から見て・聞いていて感動を覚えざるを得ませんでした。そして、司会者が最後のお祝いのことばをお願いしますという進行を受けてマイクを持ち「素晴らしい愛のある温かい雰囲気が見られ、そばにいて涙が出そうになりました。

 

 それは○○クンが言葉を発するまで全員がじっと我慢して聞く態度が最高でした。誰も邪魔しないで静かに聴こうと言う姿勢があり、全員が先生や友達に愛されているから人の話しを聴こうと言う態度が育っています。咳一つしないでじっと我慢し、人を愛する態度、ねたまない生き方を身につけたからと感動しました。

 

 将来保育士になりたいということですが、ぜひ、ありがとうを一杯子どもたちの前で言ってあげて下さい、アリガトウの少ない子がいます、どうしてお母さんがアリガトウを言わないから、何故、おばあちゃんがありがとうを人に言うことが少ないからです。どうか子どもたちの前でアリガトウを一杯言える保育士になってね。

 

 愛される事で今日のように人を愛する態度が育ちます。もう一つ乳幼児を見つめる時、可愛いと思って見つめてあげてください、それも心から可愛いと思って見つめると素敵な笑顔になります。ありがとうと笑顔を忘れないでね』と言って最後のことばを結びました。

 毎年両親が出席していない子どもたちだけの卒園式で、子ども同士が周囲にいる大人や仲間から温かい愛のある雰囲気の中で生き抜く力を身につけ、心の基地を持って巣立っていく姿を見る場が与えられる事を感謝しています。   園長 飯田 和也

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