熊本県天草市と長崎県の境の海流の速い箇所に約二百頭のイルカが棲んでいるそうです。しかし、以前は漁師にとって魚をとる網を破ったり、魚が逃げてしまうなど邪魔者であったイルカでした。
しかし、今ではそのイルカが船に寄って一緒に泳ぐ姿を観光客に体験してもらうことで漁船を有効に使ったり、町で宿泊したり、経済的な効果をあげる事で共存できる関係が生まれたそうです。
天草市の港から漁船に乗り、10分ほどで真っ青な沖に出ると数隻の漁船が魚を獲っている光景が目に飛び込んできました。
周囲には釣りをしている船の近くで五分ほどイルカが出てくるのを待っていました、どのように現れるか水平線の遠くを見たり、真っ青な海を見つめていると、突然船の下に大きなイルカが白い腹を見せて横切り「ワア、大きいすごい」と叫んでしまいました。
その後、船から5mぐらいの近くを二頭のイルカが寄り添うように背びれを見せてくれました。しかし、その後、近くではイルカは見られませんでした。
これで終わりかなと思っていると、船頭さんは操縦室から遠くを見つめながら場所を変えると「あ、いた・いた。」イルカの背びれが見えたのです。
さらに、遠くに数頭のイルカが見えました。すると船の回りには次々とイルカが現れ始めました。大きな背びれが三頭、また、四頭、あたり一面イルカに囲まれました。
船の速度に合わせるように右側には数十頭、そして手で触れるような近くまで来て海水をビューと吹き顔にかかりそうでした。左を見るとそちらもイルカの姿・姿でした。
前方をみると大きなイルカがまるで「こっちにおいで・おいで」と手招きしているようで感動のために涙が出そうになりました。さらに海の中を見ると大きな母イルカの横を小さな赤ちゃんイルカが白い体を見せて寄り添っている姿が見られ感激の連続になりました。
「何頭ぐらい棲んでいますか」と船頭さんに聞くと全体で二百頭ぐらいに増えたそうです。船の周りには数えることができない大群に囲まれ「イルカが見てみて・一緒に遊ぼう・僕を触って・こっちにおいでよ・何しに来たの・元気で生きてね」そんなサインが投げかけられた雰囲気を味わい一生に一度と言う体験ができ感謝となりました。
この邪魔者という相手を受け入れる考え、そして一緒に生活することでイルカと漁師も共に生きていくことが出来る場が与えられ、日本で数少ない共存の成功例です、という説明を受けました。
日本の中でも隣に住んでいる人と仲が悪い、表面的には良いが内面はねたみ・嫉妬心の生活が見られます。このような漁師とイルカが海の上で穏やかに自分の生き方を邪魔されなく平和に共に生きていく知恵を世界中に知って欲しいという思いになりました。
このような町に住んでいる人々の態度には、温かい雰囲気が感じられました。それは研修会の場で二人一組となり眼を閉じてお互いの手を握り合い、ぬくもりを与えられることで情緒が安定しますという体験をしてもらいました。
すると、手を握り合った人々は、終わった後隣同士の方と「笑顔」や軽く会釈する姿が多くの場で見られました。
この温かい雰囲気は、隣の人と始めて肌がふれあい、手のぬくもりを与えられたという感謝をこめた心の交流が見られたのでした。イルカを大切にする環境だからこそ育っているのではないでしょうか。
市全体が人や生き物などお互いの生活を尊重し、ルールを守ることを大切にするという心遣いが育っているからと思わざるを得ませんでした。
人とイルカ「生き物」との温かい愛のある環境を体験し、生き物を虐待し友達をいじめることがない生き方のモデルの一つとして紹介しました。
園長 飯田 和也