仕事や家事に忙しいという毎日の中で、時には子どもの行動を見つめたり、言葉をじっくりと聞いてあげたいものです。仕事に追われ、食事の準備、洗濯や掃除そして買い物に時間がかかりじっくりと子どもの姿をみていないことが多いと思います。
また、家族が多いと子どもと一対一という触れ合いが少ない場合もあります。一人だけの場合でもそれなりに手がかかり、時間を割いて関わっていることがあっても一つのことを見ていないこともあります。
そのような毎日の中で幼稚園・保育園・小学校でも参観日があります。参観日は子どもにとっては、唯一の自分のために時間を割いてくれているお母さん、そしてお父さんを独占するひと時です。参観日に自分のお母さんが他のお母さんたちよりも遅れ、姿が見られるまで手がつかない・落ち着かない・そして泣きたくなるような子どもたちの心です。
家庭では、子どもが「遊んでいる」「○○している」といった見方でチラッとだけ見ている、傍にいて遊んでいるからいいということが多く、子どもの発達を見ていません。
例えば、はさみを使う場面で説明します。部屋の中ではさみを使ってチョキチョキと紙を切っているなあ、持ち方危ないなあ、何か一生懸命に紙を切ってつくっているなあ、この子ははさみ使いたがらないなあ、まだ危険だから持たせたくないなあといった、親の立場で忙しい時には一人で遊んでいるから良い、まだ、危険だから触らせないといった関わりがあります。
このような家庭環境が多い中で「年長組の親子で七夕飾り製作」する場面から教えられました。家庭ではじっくりとはさみを使うことを見ていないと多くのお母さん方から感想が出ました。
それは、天井からモビールにして子どもの顔と円形にした渦巻きを吊るすためにはさみを使う場面でした。四歳児ごろからはさみを直線に切れることが出来ます、しかし、丸く切ることは個人差があります。多くのお母さんは、はさみで渦巻きに切る行為を、家庭では見たことがありません。わが子がどのように丸く切る能力があるか知れません。丸く切る姿を始めてみる場面が多くのお母さんにはありました。
子どもたちは真剣な顔つきになってはさみを使い始めました。直線切りでなく丸く切るためには紙を見てはさみを動かさなければなりません。失敗しないためには、渦巻きに書かれた線をしっかりと見て、紙を手で持ってはさみを使わなければなりません。そして、最後まではさみを使い切るには、集中し、途中であきらめないで持続することで完成します。
子どもたち全員がお母さんやお父さんの前ではさみを使って紙をしっかり持って、渦巻状に書いてある紙に時間をかけている姿を見せることが出来ました。
多くのお母さんが始めてわが子にこのようにはさみを使う能力が育っていることをじっくりと見ることが出来たのは初めてですとクラス懇談会で「参観の感想」を話す時にありました。
今回の親子製作は、四角い紙でなく丸い紙の渦巻きを切るという教材により、母親は「あれ、こんなの切れるかな」子どもたちは、直線切りでなく丸く切るという、手先を集中し切り上げるには危険を察知し、持続する態度で臨まないと完成しないという緊張する参観の場が与えられたからと思います。
親として、普段何気なくしていることが当然でなく、一年前に比べると身体発達の身のこなしや指先を工夫し、器用に使えていることを気づき、子どもには、こんなにも手先が発達していることが見られて「お母さんもお父さんもうれしい」と言う参観日になりました。
園長 飯田 和也