東海学園大学 飯田和也
保育所・幼稚園・子ども園における合奏についての教育は、自分ひとりだけがかってに音を出し楽しめば良いという指導をするのでない。周囲にいる友達や指揮者がいれば相手の出している音に合わせ、きれいな音ができた時に自分から気づいた音のきれいさや工夫すること、周囲にいる仲間とかかわる大切さを味わう体験を通して、知的発達を気づかせると同時に身体的・社会的発達を身につけることが教育になります。
保育者の教育の基本として「合奏」をとおして知的発達や身体的発達・道徳的発達を身につけるため
1 子どもの能力や季節・行事に相応しい曲を選ぶこと。
2 子どもの音楽に対する積極的な姿勢として興味・関心を持 っている楽器を選ばせる。大人の都合ではありません。
3 保育者が指揮者を勤めるのであれば子どもたちがたたきたい心を味合わせるために、解かりやすいサインを出すこと。先生が曲に合わせて指揮をするのでなく、子どもが楽器を演奏しやすいように息継ぎ、手のうごき、眼のサイン、口ぱく、身体サインなどを使うことです
4 子どもの音楽に対する能力を見極め一緒に楽器や曲を選択することなどが大切になります。
『ねらい』として「クリスマスの曲、サンタが街にやってきたを友達と一緒にきれいな音を味わうことを楽しむ」といった発達の方向性として楽器を大切に扱い、音を合わせたときに揃ったことが快いことを味わうことがあげられます。
また、教育内容の発達「五領域」で捉えるならば『健康』では、子どもたちが手先や身体全体を使用してカスタネットをリズムに合わせて,『環境』として、カスタネットの性質として思い切りたたくのでなくやさしく・そっと叩くことでもきれいな音がでることを理解する。『人間関係』として自分ひとりでたたくのでなく友達のとなりで大きな音を立てたり、たたく時に友達の邪魔をしないで楽器を大切に扱い、きれいに音を出すことという約束事があることを理解する。『言葉』では、歌詞を理解して楽しむ。『表現』では、自分なりに感じてきれいな音が出きた喜びを感じる。といったように発達の多面性で把握した指導をすることで、劣等感を与えないための保育内容が教育になります。
合奏を通して身につけさせたい教育として「物的環境」ではカスタネット・タンブリン・トライアングル・木琴・鉄琴・ピアニカ・大太鼓・小太鼓・シンバルなど子どもの能力に相応しい楽器を準備する。『人的環境』として保育者が楽器を大切に扱う姿を示す。友達がピアノで弾く音に合わそうとする姿。友達が曲に会わなくて失敗する姿。「雰囲気」として、静かに最初の音が始まるまで待っている雰囲気をつくる。音が合ったときに温かい雰囲気を作る。このように合奏を通して子どもたちへ身につけるため保育者として指導案や保育実践が教育の基本となります。
当然、ただ楽しめば良いというのでなく合奏を通しての教育では、合奏をするための約束事がいくつかあります。例えば、休符を大切にすること。音をきれいに鳴らすための持ち方や叩き方があります。しかし、基本を知らないとシンバルを二つ入れるとどうしても一緒にならないのがシンバルという特性です。人数を多くするだけという大人の都合では合奏になりません。園の子どもたちの発達の状況に合わせた配慮をすることで身につきやすい教育になります。
合奏での子どもの姿として、健康『手先が発達していないと持ち方が悪かったり、体力がないためにふらふらしたり、我慢できなくて音を鳴らしてしまう』人間関係「約束を理解しないで勝手に音を出して騒がしくしてしまう。じっと先生や友達の行動を見て真似したり、言われたとおりにしている」環境「伴奏しているピアノの音を聞いたり、曲の流れを身体で感じている。カスタネット・タンブリン・木琴や太鼓など乱暴に扱わないで音を興味深く聴いている。」言葉「曲のイメージを理解している。歌詞を覚えて口ずさんでいる。」表現「周りの音を意識しないでガンガン叩いている。隣の友達の木琴の音を聞いてそろえて楽しむ。先生の指揮が理解できなくてシンバルはバラバラになっている。」
このように五領域で捉えることで発達の多面性を見つけ、知的・社会的発達などを身につけることに結びつきます。ここで教育として健康では「しっかり指先で持ててトライアングルきれいに揃って気持ちいいねと共感する」このときに音を主体的に叩き、自分から音を作れたという知的発達を気づかせることが教育です。人間関係では「○○チャンのカスタネット叩くとき身体を押して邪魔しないで少し離れてごらん、きれいに叩くことができるからと助言する」この場合も社会的発達として友達と一緒になり、相手を大切にする態度を身に付ける教育に結びつきます。環境「鉄琴できれいな音だしてクリスマスの曲を感じが出てすばらしいと共感する」この鉄琴を大切にしてホールいっぱいに響くことで聴いてもらうことと認められたことで自信がつき、次に鉄琴を弾きたいという意欲に結びつき発達の中の主体性を身に付ける教育になります。言葉「サンタが街にやってきた、の言葉を覚えたね、間違えないで揃って歌うとサンタさんが来たみたいで素敵だね」イメージを豊かにして知的発達を気づかせ、保障する教育になります。表現「始まるまで音を立てないで静かにしていたからきれいに聞こえたね。音楽には休符といって音が無いときを大切にするととってもきれいに聞こえるね、これからも楽器を大切にし、音を大事にすると良いねと助言する」友達を大切すること、一緒に合わせることを気づかせ身につくことで道徳的発達の思いやりが身につく教育に結びつきます。
音を学んで苦しんで身に付けさせる「音学苦」から音が作れた楽しみを味わう「音楽」の中で主体性を気づき知的・身体的・社会的・道徳的発達が身につくように楽器や曲を子どもの能力にふさわしいか、どうかを見つける感性が保育者には最も求められます。