保育の基本112 保育の質を考える

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二月は参観日

二月は2/8年長のドッチボールの参観日がありました。クラス対抗とお母さんのドッチボール、その後に参観の感想と三年間の成長・発達を話し合いました。

 2/13 日はたんぽぽ組、2/14日は年中組、2/15日は年少組と続きます。四月から大きく成長・発達した姿を確め、子どもを授かった喜びを味わっていただけるため保育の内容を工夫しています。「可愛い姿・失敗しても良い・多くのことを要求しない・一つで良い」と笑顔でわが子を見つめてください。温かい愛のある雰囲気に包まれた参観日になりますように。

保育の基本112 保育の質を考える

     東海学園大学 客員教授  国際子ども研究所所長 

                               飯田 和也

 

 保育の質を高めるには、子どもが主体的に行動できる教育とそれを保育者が意図的に教育できるように理念・目的・目標や方針を計画し身につける教育の二つを整合させる事です。

 保育所では当然、保育者が命を守り、情緒の安定を図り、生理的欲求を満たし、保健衛生的に大人がする養護が基本となって主体的教育と意図的教育を整合させなければなりません。

 

 養護に包まれて教育があること、特に乳児や障害児、幼児は自分で命を守り、甘えたくても受け止められないこと、食べるものを用意もできない、病気を守る事もできないために大人がすることを理解し整合させなければなりません。

 

 主体的教育とは、保育所保育指針第二章「子どもの発達」の中で自我能力「困難に対処する力」と主体性が述べられ、この乳幼児が自発的に環境にかかわり身につけることを指しています。この子どもの発達にかかれている主体性を子どもたちに保育者が身につけさせるのが主体的教育です。

 

 しかし、昭和の保育のように保育者主導の教育ではありません。乳幼児不在でなく子どもの立場になって保育者が発達支援する事です。それは各年齢の保育者が自分勝手に考えた指導計画で技術や知識を身につけさせる事ではありません。

 

保育者の意図的教育とは、目標を具体化したねらいと保育指針で明確に記述されている「ねらい」を理解することです。ねらいを発達の方向性として会得し計画や方針を保育所の実態に即し、保育課程と指導計画に取り入れることです。

 

乳幼児の発達を保障するとき、縦割り保育・同年齢の保育等を意図し主体的教育との整合を図ることです。このときクラス編成上の形態、保育展開上の形態、設定活動、自由活動、一斉活動など様々な形態や活動を考慮します。

 

整合性を図るときに理念・目的・目標・方針に主体的教育をどのように形態や展開に取り入れるとき大人の立場でなく子ども最善・そして子どもの発達を取り入れます。

 

基本が発達過程として「おおむね○歳」発達を偏らないで捉える「五領域」子ども同士の発達保障として「発達特性」を会得し計画と実践に取り入れなければ整合性を図ることは出来ません。

 

乳幼児の発達を捉えないで上手に動かせれば良い、保育者の都合で一日が過ぎれば良い、乳幼児が楽しい姿を見せているから良いでなく、保育の目的にある子どもの最善の利益を考え、子どもが保育の中から「困難を乗り切る力」「主体的活動」を身につけさせる計画と実践が整合させる事になります。

 

保育指針第三章 保育の内容で記述されている「ねらい」は、第一章「総則」に示された保育の目標をより具体化したものであり、子どもが保育所において安定した生活を送り、充実した活動が出来るように、保育士などが行わなければならない事項及び子どもが身につけることが望まれる心情、意欲、態度などを示したものである。「内容」は、「ねらい」を達成するために、子どもの生活やその状況に応じて保育士などが適切に行う事項と、保育士などが援助して子どもが環境にかかわって経験する事項を示したものである

 

 このように改めて指針に述べられている事を正しく理解することで整合が図られます。発達を子どもの主体的活動とし、その発達をとらえ意図的に形態や活動展開を立案や実践に結びつけることが整合性の課題と言えます。

 

具体的な事例として

 手遊びでは、保育者の都合のつなぎの保育でなく発達過程「おおむね○歳」を考慮し五領域で偏らない発達を捉えて、自分から保育者の言葉を聴く・手先の動きを観察する、そして模倣して形を身につけるのが主体的教育と言えます。また、この子どもの発達を会得し指導計画や異年齢保育また一斉保育や自由活動などの展開や形態で、手遊びとかかわる時に身体的発達や知的発達などを見つける眼と発達していることを共感・見守り・励まし・慰めなどの発達支援を通して気づかせ、主体的活動を保障することです。

 

 手遊びを子どもたちにやらせれば良いでなく、手遊びを通して健康「手先・身のこなし」人間関係「手遊びを通してルール」環境「手遊びの楽しさ・手遊びの曲」言葉「手遊びからイメージを持つ」表現「手あそびで自分なりの表現や感性」など偏らない五領域を意図的に身につけさせること、同時に子どもたちが自分から手遊びをしたくなるような主体的活動が出来るように同年齢保育では様々な年齢にふさわしい手遊びを選択できる環境構成をすることになります。

 異年齢保育では手遊びの発達している能力を見つけて指導計画の中で物的環境・人的環境・温かい手遊びをしたくなる雰囲気を立案します。

 一斉活動・自由な活動などの中で手遊びでは、一人ひとりの発達を愛し、指導計画でねらいと内容などを工夫する事で手遊びをしたくなる曲を選択し、保育者や友達のモデルによって「手遊びをしたくなる人的環境・人とのかかわる楽しさを味わう雰囲気」を構成する事で主体的教育と意図的教育の整合となります。

 

 手遊びは、子どもが自分から関わりたくなる人的環境として「ただ手遊びを保育者がすれば良いというのでなく、モデルとして子どもが自分から手遊びしたくなる環境を考える事も大切になります。当然、子どもの興味・関心に結びつく文化を理解していなければなりません。手先の発達や自分たちの興味・関心に相応しい教材としての手遊びの選択が求められます。さらに、周囲にいる子どもたちが「失敗しても良いよ」「間違っても良いよ」「上手でなくても良いよ」といった温かい受け入れてくれる雰囲気をクラスの中にかもし出す保育が重要になります。

 

 さらに、保育者が子どもの自発性を保障するには、子どもの主体的な行為を捕らえる保育者としてのプロの眼を養っている事で受け入れるアンテナをもつことが最低条件となります。

 子どもが保育者や周囲にいる友達の手遊びをする行為から先生や友達を自分からおもしろい・不思議・楽しいと感じ真似する行為を見つけるのがプロとしての眼です。そこで、保育者として「・・を見つけたね」「○○をまねしたね」「友達の声や先生の言葉を聞けたね」といった自分から○○している主体的行為を気づき、見つけ、共感することが主体的活動を保障し、生きる力に結びつくことになります。

 

 子どもの発達を理解し会得した上で指導計画のねらい・内容、そして環境構成がかかわりたくなる手遊びの選択となります。手遊びを実践する時の設定・一斉・自由・異年齢保育といった形態や・活動を考慮した指導計画が保育者の意図する発達を愛する実践に結びつく事が保育の質を高める事になります。

 

 散歩では、保育者の気分転換の散歩でなくおおむね○歳と五領域で指導計画を立案し、発達を保障することが主体的教育と意図的教育の整合性を図る事になります。

 

 ねらいでは(…楽しむ・味わう・広める・深める・しようとする)と言った心情・意欲・態度など散歩を通して心を安定し、園の周囲の環境に関わり危険を察しながら季節感を味わったり、きれいなものを見つけたり、面白い事を自分から体験し充実した行動を保障する立案と実践が求められます。

ここで重要な散歩のコースを選択する事は、子どもの眼・耳・鼻・手・足になっている事です。保育者がかってに考えた散歩コースでなく子どもの立場になった視線と聴覚になることといえます。主体的な生き方を配慮するならば大人の視線でなく子どもの低い視線や感性が豊かな子どもたちの立場になっている事で主体的な環境構成が見えます。

 

 そこでは、きれいなものをきれいと感じそれを100年先まできれいにする生き方を感じる表現を身につけ、自分だけでなく将来の生き方にまで影響するのが散歩といえます。

 上手に歩かせるのでなく歩く時のルールを守り、近くの人々との触れ合いで様々な言葉の使い方や人との関わりを気付かせ、将来の生き方で地域を大切にする事、地球を大事にする中で事物を大切にする心と困難を乗り切り、主体的な態度の散歩を通して身につくように保障すること、そのための指導計画を異年齢の散歩や同年齢の活動に発達保障するために取り入れる事が整合性を図ることになります。

 

 折り紙では、子どもに形になるように折らせれば良いという保育でなく、折れたときの心情を共感し、次に折りたくなるような意欲や折っている時の忍耐力・工夫する知的発達を身につけるために「自分から折り・イメージをもち、指先を工夫して使う」といった主体性を正しく捉え、それに相応しい計画としてねらい・内容・環境構成・予想される活動・援助の立案と実践を整合させる事が保育の質を高める教育です。

 

 折り紙が折れた喜び、そして忍耐して出来た充実感、創造的な考えが見つけられた満足が得られた場を保障する事です。しかし、折り紙の大きさや折りやすい紙の質、折りたくなる環境構成を立案し、発達支援の中で折り方を問いかけ・助言・励ますこと、折っているときの指先の使い方を気づき共感することで主体的活動を保障することです。

 そのための折り紙の折り方や紙の質、周囲にいる友達の温かい失敗しても良いよ、間違っても良いよ、次に折れるようになるからと受け入れ、信じてくれる温かい友達の雰囲気を指導計画に立案し、実践で受け入れるクラス集団を作る事が知的発達を保障し保育の質を高める場に結びつきます。

 

 の場面では、絵を上手に描かせれば良い実践だけでなく、様々なものを自分から観察しているときの主体的活動の知的発達を保障し、描けた喜びやもっと工夫したい、さらには創造的な力を身につけ、描くときに友達の真似をしたり、描くときのルールを守ったり、おおむね○歳と五領域・発達特性を会得した立案と実践をすることです。

 保育者として鋭い感性を持ち、子どもからのサインを受け止め、子どもの主体的行動を見つめ、自分から聞く・見る・感じるという感性を高める教育を保障する事です。

 

 このように絵の技術だけでなく絵を通して、自分から描く・考える・真似するという主体性とその主体的に行動している場面を気づかせる環境構成を子どもの立場になって立案することです。

 

「好きな絵描いて」と言った子どもにイメージを湧かせないような言葉かけでなく、描きたくなるような問いかけや助言、さらには描けた喜びを味あわせたいものです。さらには、おおむね○歳を基盤に発達の方向性を考慮し、絵を描く場面に五領域で偏らない発達を保障する意図的教育の整合を図ることです。 

 

 異年齢保育では、子ども同士がかかわって遊んでいるから良い保育実践をしていると勘違いをしないこと、その子ども同士のかかわりの中で保育指針第二章に書かれてある発達特性(3)身体的・知的・情緒的・社会的・道徳的発達を見つけ、子どもたちにこれらが発達していることを気づかせ、喧嘩の場面では言葉に言い表すことができない喜怒哀楽を保育者が代弁することで道徳的発達を保障するということで情緒が安定し、主体的に行動できる教育に結びつきます。

 

 異年齢とのかかわりを指導計画に立案する時、子どもの発達を見つけ、子どもに気付かせる見守り・助言・励まし・慰め・問いかけなどを発達支援に具体的に立案し実践することが整合する事になり保育の質を高めることになります。

 

行事では、四月の子どもの姿や一年前の行動している姿を様々な行事のときに観察すると、一人ひとりの成長・発達が理解できます。身体的発達として入園のころ身体的にしっかりと立てなかったり、歩けなかったり、忍耐力や調整力が弱いことがあります。

それが数カ月経ち、一年経つと身体的発達となり、言葉が話せなかったことが話すことができるようになり知的発達が獲得できます。

一人だけの行動から友だちと一緒に動く事ができ、関わりが広がる社会的発達している事を観察し、何故、そのようになったかの原因を見つけ、点検・評価することで改善に結びつけることで保育の質が高まります

行事では、子どもたちに劣等感を与えない配慮をすることで一人ひとりの発達「おおむね○歳」「五領域」を捉え、一斉活動の保育・自由活動・設定活動・縦割り保育・同年齢保育といったその発達を子どもに気づかせる援助をすることで主体的活動を保障する事になります。

初めての入園式・七夕・クリスマス・運動会・参観日・遠足・卒園式のとき、話すことができない・歌えない・踊れない・楽器も出来ない・人と合わすこともできない・泣いていた・一緒に行動が出来ないといった子どもを五領域で捉えると成長・発達していたり、特に、身体的発達・知的発達・情緒的発達・社会的発達・道徳的発達といった子ども同士の発達で観察すると、行事でそれなりに自発的に関わる態度が発達・成長していることが捉える事が出来、環境を工夫する重要さが見直されます。

 

様々な行事を上手にさせるだけでなく主体的にかかわれるような環境構成として教材研究をして一人ひとりの発達にふさわしい曲、楽器、道具、材料、施設を準備したいものです。

 

そして、この環境構成に子どもたちが主体的にかかわるとき「子どもの発達の中で育った環境からくる個人差」を考慮し「予想される活動」を立案します。それによって主体的活動の場を大切にすることで事故が少なく、充実した活動を見つけ、安心した集団の中で行事を通して主体的教育と意図的教育の整合ができます。

 

保育の質を高めるには、乳幼児の主体的行動を気づく観察力とその主体性を保障する指導計画で保育の内容を立案し、第二章の子どもの発達「おおむね○歳」[五領域]「発達特性」を会得し、一人ひとりの発達支援が求められます。

 

この原稿を書いていて主体的教育と意図的教育の整合をするということは「心から子どもたちを愛していなければ出来ない」と言うことをつくづく感じて書いています。

保育指針を手元において、保育者が乳幼児を愛する保育を思い浮かべると、次々と温かい文章が湧いてきます。傍らに保育の神様が見守っている雰囲気に満ち溢れています。また、多くの先生の鋭い指摘や考えでさらに文が湧いてきます。心から感謝です。

刺激を与えていただきながら子どもの発達のために一緒に高まる事が出来れば幸いです。大変大きな課題の一つですがこれからもよろしくお願いします。

 

 

 

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