共に育つ愛の保育 492
ありがとうについて 飯田 和也
小さなこどもにおもちゃを渡したとき『ありがとう』と言われるととても心が癒されます。
しかし、笑顔もなく当然という態度を示されると少し考えさせられます。これと同じことが大人にありがとうと言われてうれしくなるが、当たり前という態度の相手には悲しくなることを、ありがとうと言わない大人は知っているでしょうか。
ありがとうの言葉は国・地域・環境によって「ありがとう」が飛び交っているところと全くありがとうの少ない場所があります。幼稚園やこども園の中でも、ありがとうと言える子どもとありがとうの表現の仕方に違いが現れます。ありがとうと小さな声で言う子と照れてしまって言わない子ども、大きな声でありがとうとはっきり言うなど違いが見られます。
どこでも「ありがとう」といえる子を見ていると様々な時や場所でスムーズに出ている子は、家庭でありがとうが言えています。しかし、集団の中でありがとうが出ていない場合が見られます。
ありがとうは、相手によります。自分を受け入れてくれる人・ほめてくれる人・かわいいと思ってくれる人・間違ってもいいよという相手には、ありがとうが飛び交います。
しかし、ありがとうを言わないとダメ、はっきりと聞き取れない場合では、ありがとうと言わないといけないでしょう、押し付けたり、言い直しをさせる相手には「ありがとう」という言葉は言いません。人に対して照れ・恥ずかしがったり、少し遠慮する仕草が見られます。また、ありがとうと口の中でもぞもぞと口ごもるが周りは聞こえないだけで自分は言っている場合もあります。
このようなありがとうという言葉は、育った環境、受けたしつけ、教育によって表現に違いが出てきます。ありがとうという相手を心から素晴らしい出会いを与えられて感謝する場合には「素晴らしいありがとう」の表現が出ます。
子どもが親に対して反抗したり、無視したり、かかわりを持たなかったのが一か月ぶりに「パパ、パパの顔描いた、見て」とつたないが眼鏡とひげをそっくりに仕上げて見せに来た時、急にそっくりに描ける絵を見て、嫌いといいながらよく観察し、技術が伸びているのを見つけて感性が鋭い能力のある子と認識すると「この子を育ててよかった」「大きくなった喜びを与えてくれる子ども」という感覚になり、「心からありがとう」といえる時が与えられたと思います。
心と心の結びつきにより「ありがとう」の言葉は広がったり、深まったりします。子どもは環境を通して発達するという言葉のようにありがとうの少ない子どものお母さん、その子どものおばあちゃんは、ありがとうが少ないといわれます。
温かい愛のある雰囲気で育った子は、周囲から受け入れ・認められていることで感謝する生き方が身についています。自然の行動として、園生活や家庭環境で愛されているから、人を愛する態度の「ありがとう」がでます。