飯田 和也
自分の子どもが多動であったり、言葉が遅かったり、人とのかかわりが少なかったり、行動がスムーズでない場合に不安とあせり、そして社会的態度として世間体を恥じたり、隠したり、子どもの現状を認めたくない・家が忙しかったから面倒見ること出来なかったなど様々な保護者の態度が見られます。
保育所や幼稚園に入園する時、最初の集団に対して保護者の子どもへの理解のあり方や養育態度を理解しなければ支援となりません。以前、大きな病院へ自閉症かどうか診断を受けてきてくださいといわれ、母親は診断とその後の育て方を教わりたいと出かけたところ、「この子は自閉症です。何もすることはありません」といわれ、大きなショックを受け「もう、この病院には絶対に行きたくない」と心に傷を受けて帰ってきましたという母親の言葉は保育者として考えさせられました。
また「お母さんが頑張らないでどうするの、一生懸命頑張って○○チャンを一緒に育てましょう」と今、死ぬほど頑張っているがどうしようもない、子どもと心中したいようなときに「安易な励まし」をする態度でなく、「頑張っていますね。」と辛いこと・悲しい時・苦しい子育てを共感する保育者でいたいものです。
共に泣いてくれる先生や共に苦しんでくれる友達が一番必要な時が入園の前や入園の頃の保護者の心境です。この共に泣くだけで良いときを大切にしたいものです。
様々な相談する場所として支援センター、子ども相談所、病院、大学、保育園や幼稚園などがあります。わが子のために必死で生きている保護者に対して「子どもを授かって良かった」と思える時と場所を与えることが出来るような具体的に理解できる保育が必要になります。
保護者が子どもの良い所を見つける眼、そしてわが子にはこんなにも能力があったということを気づかせる保育をすることです。例えば、入園の時に言葉が遅く、集団ではふらふらしているわが子が二ヶ月後には椅子に座り、じっと先生の話を聴く態度を参観日で後ろから見ることが出来て感激して泣くお母さん。
何故かを説明しました。クラスの先生が○○ちゃんと名前を呼ぶと声が出ないが手を上げたとき、「○○チャン手をあげられて大丸」と受け入れる保育を続けました。子どもは先生に認められ・愛されているから椅子にじっと座るようになりました。ほめ上手な保育の結果です。
入園式の時、一分間もじっとしていなかった子が椅子に座ってじっとしている姿が見られてうれしいとハンカチを出して泣くお母さん。何故か「先生,見てとおかずやご飯を食べたのを見せに来るとワア、先生うれしい、こんなにもたべることができて○○チャン大好き」このように具体的な共感で愛されているから一つ自信を持つ、そして自分から○○する自立に結びつきます。
入園前は言葉が遅く友達と遊ぶことが出来なく叩いたり・押したりしていた子が友達の名前を言うことができるようになったと感激して涙を出すお母さん。「けんかしたときに先生は、お互いの心情「言葉に言い表すことが出来ない喜怒哀楽」を代弁して相手を思いやる心を一つひとつ丁寧に答えて友達を大事にする態度を気づかせていました」
入園の前は笑顔がなく情緒が不安定な子でしたが参観では、友達と付き合い,自分で帽子を持ちに行きかぶることが出来るようになり感動しました。入園前言葉が遅かったが、参観では一番大きな声で歌っている声が聞けてうれしい。
このように入園前に子どもが集団に入れないのではないか、言葉で伝えられないのでないか、友達と遊べないのでないか、おしっこを失敗ばかりしているのではないかと不安と期待の入り混じっていた母親の心情を理解し、安心・安定するために具体的な場面を示し、説明することが大切です。
しかし、「大丈夫ですよ」といった言葉でなく二ヶ月間で具体的な発達を示し、説明する場が保育室にはあります。日常の保育や参観日を通して子どもの能力を気づかせることが出来ます。このような気になる子を持つ母親に対して、「自分の子どもの能力を見つけ、気づく」のが参観日や日常の保育です、気づいたら一生わが子には能力があることを信じてあげてください。
半年前や入園の頃を比べると、言葉が伸びた子、友達関係が広がったこと、情緒が落ち着いたこと、まねする力があることを見つける眼ができます。出来ないこと・悪いことばかり見つけないでください。悪い箇所はチラッと見ただけでいえます。
しかし、小さな発達・成長はわが子を受け入れないと見えません、又、じっくりと時間を割いて見つめないと見つけられません。そして、この見つけた時に「子ども授かって良かった」「子どもの大きくなったことを気づかせていただいた先生に遭えて幸せ」「明日から頑張って生きていける」と言う生き方に結びつきます。
子育てに最も悩み・苦しみ・迷い・不安定な時期こそ保育場面と言う新しい環境で、わが子の能力を見直すチャンスがあることを伝えることです。伝えられることで親子が生きる力を気づかせる教育に結びつきます。
しかし、気になる子どもを持った親に対して、すべてを許すといった盲目の愛はわがまま・自己中心の生き方となります。道具を使う時、新しい場面でルールがあることを具体的に丁寧に最初に伝えることも大切です。
最も大切なことは、具体的な言葉で判りやすいこと、命を守らせ、人に迷惑をかけない行動を身に付ける教育には、繰り返し伝えることと出来ていることが当たり前でない考えを親として捉える力を養うことです。
さらに、多くのことを要求しない、失敗しても良い、一つで良いといったスローガンのように伝えることで心に残りやすい文を伝えたいものです。
さらに、自分ひとりだけでなく周りには同じ悩みや苦しみを持っている人がいる、一人でなく社会で子育てをすると楽になることも伝えたいものです。