東海学園大学 飯田 和也
重大事故を起こさないため何が危機かを点検・評価し優先順により改善する。養護の第一、命を守るための点検・評価をして対策に着手する。養護に包まれて教育があるという朝、来た時のそのままの姿で親に返すのが保育の基本です。地震そして津波に遭い、たとえ一日・二日・三日後に迎えに来てもそのままの姿で親に渡すのが保育のプロです。
子どもの成長・発達に必要な体験が家庭とは異なった保育の集団にはあります。大事故につながるからといって全てを禁止すれば良いというものではありません。その園の危機管理能力を考慮して保育環境を整え、そして保育の計画を立案したいものです。
職員研修や会議で原因を点検・評価し全員が改善した事を共有することです。
保育現場での役割分担を明確にして誰かがするのでなく具体的な連携をすることです。
事例1 園庭には滑り台や総合遊具といわれているものがあり、高い箇所から落ちて骨折する事故が多くあります。保育者がそばにいても落ちたり、いなくても飛び降りたりして打ち所が悪くて骨折して救急車で搬送される場合があります。
滑り台の遊具そのものに子どもの能力や発達に相応しくない場合は環境の再構成として遊具をその園の子どもたちの能力合わせる事となります。手すりの位置、階段の角度、安全のための部品などの点検・評価、そして改善が求められます。
五歳児年長児が自由な保育時間に友達と滑り台にて○○ごっこをしていた。友達が飛び降りたのを見て○○と言って飛び降りたが着地に失敗して動けなくなってしまった。近くには先生がいなくて友達が担任を探し見つけて現場に行った。様子を見ると右足首の骨折の疑いのためにすぐ病院に搬送したところやはり骨折であった。この事故が何故起きたかを点検・評価する。
物的環境の点検として滑り台で落ちるような構造であるかを評価すると踊り場の柵の高さが低い事・外に出やすい構造であるということが判断されて構造を改善しました。
しかし、子どもの成長・発達には安全な構造で遊ぶ事が身体的発達や社会的発達には必要で滑り台そのものを禁止するのではないため保育環境の管理は経営者に求められます。
人的環境の点検として、保育者がどのような位置にいたか、園庭全体を見渡す場所、そして方向や距離か評価します。
指導計画の点検として週案や日案の中で「予想される活動」の立案に園庭でのクラスの子どもたちが遊具にどのように関わるかを予想していたかを評価しなければならない。クラス担任として今月の子どもの姿や先週の子どもの実態を把握していれば、今週は「何に興味があり、どのように行動するかを予想しなければならない」「どのような○○ごっこをして遊んでいるか」「男の子のグループでの遊び」「女の子同士のかかわりは何しているか」「気になる行動をする○くん、△ちゃん、□くんはどのようにするだろう」と言う予想を立てた週案、または日案であったかが問われます。クラス担任の予想される活動は一人ひとりの発達の個人差です。
先週は弟の甘えている姿から甘えたくなり情緒が不安定な○クンだった。昨日は・・チャンとおもちゃの取り合いをした△ちゃんで泣く事が多くなっているので注意すること、一人だけフラフラしている□くんが気になっているなど一人ひとりの先週の姿を観察している事で指導計画の立案の「予想される活動」を評価します。
評価すると怪我をしたA君は先週、甘えたくて目立ちたがって自分の欲求を出していた。お母さんが先週から仕事に忙しくてかまってあげられないといわれていたことを把握していたにも関わらず養護の一つ情緒の安定を図ることが怠っていた。改善として週案の「予想される活動」欄に「僕・・一番とすぐに先頭に立つ。わざとちょっかいだして騒ぐ。すぐに泣いて訴える」など目立ちたいと自己主張する行動を立案する。グループでの行動として「○○をとりあう、・・といじわるする、一番になっていばる」などの「予想される活動」が立案されていれば園庭での滑り台で喧嘩したり、押し合ったり、威張りあったりすることが予想できること。従ってグループで遊んでいる近くに担任は見守る事ができ怪我にならないと改善できます。
危険度の評価では、リスクが現実化し命に関わる場合には、優先すること。さらには発生頻度として頻繁に起こる場合には優先し、めったに起きない場合には低いと考えます。評価するときに対策として命にかかわり・頻繁に起こる場合は重要と評価しなければなりません。
改善では、子どもの成長・発達に結びついた環境であるかを再検討、保育の計画、さらに保育者の方法として役割の見直しをすること。子ども全体を観察する保育者、死角や目の行き届いていない箇所を受け持つ保育者、外遊びだけでなく室内での行動に対して出来るだけ子どもに背中を向けない実践を全職員が心がけること。
保護者には落ちた時の友達とのかかわる状況説明、本児の怪我をしたときの活動説明、その後の病院までの保育者の対応と怪我に対する対応を具体的に事実報告します。そして、日誌については事実を時間の流れにそって記録します。
事例2 保育者の物的環境へ気配りが出来ていなかったため失明した。
三歳児の室内に掃除道具が置いてあった。そこには、ほうきの柄がとれたまま道具入れに立てかけてあった。三歳児の男の子がその壊れたほうきの柄を持って望遠鏡のように覗き込んでいた。それを近くにいた子どもがドンと付いてしまった。そのため柄が片目に突き刺さった。結果は失明し「先生、目返して」と言う親の悲しい・悔しい保育になってしまい重大な管理の問題になった。
保育の環境として点検保育者はクラスの中で危険な道具としておいてある事を評価していなかった。保育室で三歳児ならば壊れて立てかけてあるほうきが近くにあればとって遊ぶという「予想される活動」を考えていなかったために道具に対しての評価できない保育者といえます。何故かの一つに、放任保育があります。先生はクラスの子どもたちと一緒に遊ぶ事をしないで遊ばせていればよい、好きなことしていれば自然に発達していくだろうと言う保育観が見られました。
一人ひとりの発達の個人差を抑えないで一斉に行動させる事、上手に動かす事が良い保育と思っていた保育者でした。そして、子ども同士が楽しそうに遊んでいるから見ていなくても良い。一緒に遊ばなくても誰かと遊んでいるから良いといった放任態度の保育が見られます。
放任保育の根拠に週案や日案などの指導計画を大切にするのでなく、自分はベテランで子どもを動かす事には馴れているという考えでした。
物的環境としてほうきの柄が壊れていても子どもはなんとも感じない・考えない・触らないだろう・遊ばないと勝手に決めた物的環境といえます。この環境を危ないと思わない保育観の保育者といえます。
改善として園内研修や職員会議でお互いが危機としてヒヤリハットを作成した時に、指摘しあい討論し謙虚に受け入れる態度が求められます。
週案と日案の点検にねらいと内容が混在していないか、予想される活動が指導したい内容の立案となっていないかを点検・評価することです。日常のクラスの子どもの姿を五領域で記録をする時に、どのようにクラスや園庭で一人一人が環境にかかわっているかを点検・評価して指導計画に立案します。この立案や個人記録によって環境構成が安全保育に結びつきます。
事例3 散歩に行ったときに公園の手作り遊具で指を挟み怪我をした。
点検は、環境の下見と指導計画で予想される活動の立案、子どもの動き、保育者の配置と全体を見渡す役割と死角では誰が立つか、声のかけ方の連携をしているか。評価として下見の甘さ・予想される活動が立案していなかった、保育者同士の連携が的確でなかったことが評価された。
改善は、一人でなく保育者全員が安全を確認するための下見をして共有することが安全保育に結びつく事と言えます。その日の指導計画を確認して出発することでねらい・内容に相応しい物的環境と人的環境で安全な保育に結びつきます。特に、下見に行ったリーダーは的確な指示を出す事になります。
事例4 保育時間中に園の外にでてしまい電車や車に引かれて命を亡くした。
点検は、 保育者として広い園庭や園舎であれば人数確認と物的環境が出て行くような物的環境かを評価する事。そして、子どもが出て行きたくなる保育をしていないかを評価チェックする事。
さらには、子どもが園から出やすいような死角があり、柵に穴が開いているかを評価して安全面の確認する事といえます。また、子どもの姿を点検する時、障がいのある子が多動であったり、状況判断が出来なかったり、クラス担任と約束が理解できていない時、また、園行事のときで保育者が忙しい時など誰かが見ているだろうという考えや連携できていないことを評価し物的環境として安全な柵や門を設置する改善が求められます。
ここで重要な事は責任が施設を作った経営者側、園児数が少なくなって管理する運営側など、どこにあるか明確にすることが問われました。
事例5 運動会の練習で「みんな平均台取りに行って」といったために一斉に平均台を取りに行き持ち方を失敗したために指がつぶれた。
点検は、何故指がつぶれたかと言う問題として平均台の置き方なのか、保育者の問いかけとして「みんな」という保育者の言葉が問題かが職員会議で取り上げられた。評価は、狭い場所に平均台が置いてあった事、「みんな取りに行って」と言う指示は全員が一度に取りに行きたいという意欲になるために問題となった。
改善として、道具の置き方は整理整頓して置く位置を決定し、取り出しやすい場所に保育者が確保しておくこと。「みんな」と言う言葉でなく「男の子・女の子・○○グループ」など怪我をしない配慮した人数制限のある指示をする園の方針で全職員が実践する事とした。
事例6 縄跳びを振り回して目に当たり大怪我をした。
点検は、縄跳びをさせる場所にあったのか、縄跳びに関わる「予想される活動」を予想していなかったために大怪我になったのかと言う点検と評価について討議が必要です。
改善として環境の再構成と予想される活動を立案する大切さ、指導したい内容欄に丁寧に約束事ルールを守る事・友達を大切にすること・物を大事にするなどを立案したり、発達支援として保育者の周囲への感性を持った気配りをすること。
以上のような点検・評価・改善が危機管理には事例としてあげました。さらに様々な保育場面で検討しなければなりません。乳幼児の命を守る養護の基本です、次のような事例など保育場面をぜひ各保育所ごとで討議検討していただければ少しでも悔しい・悲しい事故が少なくなります。改善をすること。
事例7 散歩の最中高いところに登り、落ちたり・灯篭が倒れて亡くなってしまった。
事例8 ベットの柵に挟まって命を落とした。
事例9 朝、早番でプールを準備していて鍵をかけないで次の職員に打ち合わせをしている最中、ガ ードを閉め忘れてプールに入って沈んでいた。
事例10 のどに食べ物がつまり窒息した。アレルギー対策。
事例11 0/1歳児の午睡時、sidsのチェック。
その他
家族への対応
親は事実を知りたい・うちの子に限って・どうしてなの。
親は「責任は誰か」明らかにすること。そして「謝罪」
被害にあった事で「どんな手当て・処置・最高の救済をしたか」わが子に対してこれ以上できない対応をしたか。少しでも手抜きをしていた事ないですか。
二度とこんな被害にあって欲しくない、悔しい・・・。そんな親の心情を理解した対応が求められます。
事故に遭ったら
消防・警察に通報
関係者から情報を正しく聞き、記録を残す「事実と意見」を明確に作成する
子どもの行動「時間の流れ」登園してから事故に遭うまでを正確にする
保育者の位置・方向・距離 他の保育者の位置と距離を図に示す
物的環境の点検・製造年月日・安全点検の記録・安全計画の提出・
週案と日案の点検、
保護者への説明
被害状況「現状と回復状態」
再発防止の具体案提出 例えば次のような案として示し・説明し実践する方針
目標・方針・指導計画・保育実践に明確に文章として具体的に記述する
職員会議で具体的な方針を話された記録を示す
一人ひとりの発達の姿を一年間観察し発達を保護者に伝える記録をする
養護に包まれて教育があります。乳幼児を愛する親に、一生うらまれない保育をするために・・・。 飯田 和也