飯田 和也
保育の基本 自閉児が保育場面で見通しが持てるための支援の一考察。
自閉児への保育は多種多様で全ての実践が、担当している自閉児に当てはまるものではありません。現場の多くの実践を参考に自閉児の発達のために知恵を出し合いたいと願っています。
ほめて自信・自立・意欲となる保育「席を立ってはダメ」でなく「Rくん座っていてカッコイイ・」出来ていることをほめる。また、保育者だけでなく子どもが子どもをほめる保育室には愛のある温かい雰囲気をつくることになります。
自閉児にとって自分は、注意や否定でなくひとつでいいから出来る・出来たという肯定と満足感を味あわうことで自信・自立となります。日常生活で認められる快い感覚を一日に一つでいいから味あわせる保育をしたいものです。
悪い個所を厳しくするだけでなく受け入れ・認め・愛のある雰囲気を作るには理念・目的・目標・方針が自閉児の発達のために文章化され職員が共通に理解している事が重要になります。
・ 行動の背景・原因を考える。自閉児は簡単に理解できない事が多い・・
生活している中で次の予定・変更を具体的に伝える
「~して○○します」例として「手洗ってから給食です」「おしっこしてから手洗います」「あと一回で○○終わります」「あと二回して△△最後です」
自閉児にとって集団では、何をしていいか不安・理解出来ない状況といえます。保育場面では、全体や部分的な状況を把握できない事が多いために、次への行動がフラフラし、目的的に出来ない態度、次への行為が異なる事があります。そのような事を具体的に伝える事で解消する一つとなります。
全職員が発達支援として共通に把握して(○○してから・・します)といった働きかけを整理したいものです。背景には、自閉児の様々な能力があることを保育者として信じることが基本になります。そして、愛のある温かい雰囲気も保育者には大切といえます。
・ 余分な刺激は減らす・途中で寄り道をしない働きかけをする
例えば、担任の働きかけが子どもの能力に合っている素晴らしい事例としてトイレに連れて行く場合[手をつないでトイレだよ、タッタ・タッタ・タッタ]とスキップしながら明るく声かけしてトイレまで連れていく。
自閉児が次にどのような行動をするか判断する場合、余分な認知をさせないでとっさに判断させる効果的保育実践と言えます。自閉児の眼・耳・鼻・口・手・足になろうという心遣いがなければ、このような寄り道をしないための温かい支援ができません。
自閉児への対応として「反応」として目の動きをみる。また、腕の動きや身のこなしを注意深く見て、次にやりたいことのサインを見つける。
そのため間の保育として少しの間「数秒」をとって見守る待つ保育を心がける。ちらっと眼を見る、そして、さらにちらっと眼を再度確認する等、この間の保育から人とのかかわりが出来てきた状況が見られます。しかし、間がないのを間抜け、間がありすぎるのを間延びといった自閉児の反応を見逃すことになります。
このような自閉児からの反応を受け止めるアンテナのある保育実践が出来るには、自閉児は認知力が事象によって鋭く・敏感さがあることを理解したいものです。保育者の自閉児に対する感受性豊かな触れ合いができることで、少しずつ人や物と関わる力がある事を信じて対人関係や社会的経験を発達させる保育を進めたいものです。
自閉児に合った伝え方 こだわりを活かす・広める・深める実践をする。
例えば、汽車に興味もっているときは汽車の本を通じて落ち着いたね、とか。一緒に汽車の様々な形を見る。色・形・線路・駅・さまざまな視点で興味持っていることを共有する。汽車の置いてある公園で一緒に大きさ、色、形をじっくり観察する態度を持つことで共有します。
また、虫の本に興味持っている時には虫を通してきっかけとなる触れ合いをする。パニックになったときに気持ちの転換としてこだわりの物・絵本を瞬時に示して情緒を安定させる。そして、間の保育をして次の保育実践に落ち着かせます。
・ 動きが多い子は、行動する役割りを考える。手伝いを与えてやりたいことに結びつける。運動会の練習にて、グランドでふらふらしている事をやめさせるのでなく、次への行動に動かせる時、台車に自閉児を載せる。また、台車を一緒に押す事をさせるとフラフラしないで台車に捕まることと、押すことで落ち着いて一緒に行動することができました。叱ったり、やめさせるのでなく興味・関心のある物を瞬時に見つけて一緒に行動する保育実践が求められます。
・ 自閉児がなぜ叩くか
人を意識出来ていない場合・・人とのかかわりを楽しめるように距離を持つ
うまく伝えられない「返して・入れて」と言った要求の仕方を具体的に伝える。テンポの合わない子やうるさいと思った子が近付くと叩く・押すという行為がみられます。
「いいよ」とか「だめ」と言う言葉をその都度伝えたいものです。社会的発達を保障するために放任するのでなく、社会的ルールを身につけさせる様々な体験を丁寧に繰り返しさせたいものです。
・ 自閉児が遊びたいなど関わり方が分からない・・
自閉児が参加出来る遊びのパターンを理解する。そして、行事や日常の遊びの中の得意な行動や動きを取り入れて、自発的にかかわり安定した場を保障する実践が求められます。
例えば、鉄棒を好まない事例・・・鉄棒では前回りはできるが、自分からは鉄棒より跳び箱が好きなので跳び箱に運動会のプログラムを変更した。毎年運動会では鉄棒をプログラムにしていたが、興味・能力に差があり関わり方が少ない事を配慮した。
従って、理解できないのを無理にさせるのでなく、能力に合わせた配慮が自閉児には求められます。
・ 自閉児は友だちが嫌がっていることが分からない時
対人認知が発達していないこと・また・人への敏感など、人との関わり方の距離感がうまく出来ないために相手が嫌がっても理解できない状況がみられます。
友だちは「嫌」とはっきり言う。また先生も「嫌」と嫌な事をしたら全員が「嫌」という言葉と態度を明確にします。
社会的発達として人とのかかわりが困難な発達特性を持っている自閉児が、社会的体験を伸ばす時にも関わり方の言葉と態度を身につけさせたいものです。そのため、最初の一歩を全員が共通にして働きかけ、人との関わり方を身につける重要な実践です。
・ 自閉児は力加減が把握出来ない・・力を使う遊び[滑り台・鉄棒・跳び箱・マット・ポール]調整する遊び[三輪車・自転車・・]手伝い[皿を運ぶ・箸を配る・新聞を取りに行く]日常生活の中で力を使う遊びや調整力を必要とする運動を取り入れ、少しでも保育や家庭の中で手伝いを通して慎重な行動をすることで、自分には様々な力がある事を自覚させ身につかせることと言えます。また、保育者や友だちの行動をまねることで身体発達と社会的発達を身につくことにもなります。
・ 「○くんの真似をする。両親の真似する。兄弟の真似する」
年中児の逆立ちをそばで見て少し真似して手をついた場面がありました。
ここでは真似したくなる園児と受け入れ・認め温かい雰囲気のある先生が周囲にいる事が重要と言えます。
・ 自閉児は近づかれて怖い・手でタッチ遊び・後ろからそっと近づいたり横から近付く。にこにこと可愛いと思って「○○くんとか・・ちゃん」と近づく。安心出来るために(○○だよ・大好きだよ)と言葉を工夫する事も重要になります。養護の基本の一つ、情緒の安定を図る触れ合いが日常最も求められます。距離感を大切にしたスキンシップ・肌のぬくもりを与える実践を個人差にあわせて試みたいものです。
・ 自閉児は考える前に手が出る「衝動」・・保育場面でどのような場面かを認知しないでとっさに手が出る場合が見られます。自分の身体でとるリズム遊び・自分の動きを調整する能力が乏しい事があります。従って、リトミックのような音に対して反応をする遊びを取り入れることも効果的なケースが見られます。
・ 自閉児は楽しすぎ・面白すぎて興奮・・保育場面でケラケラ笑ったり、にこにこしている事が見られます。自閉児は面白い・不思議・うれしいという言葉に言い表す事ができない心情を理解して共感されることで、自分の感情を認められて情緒が落ち着く事になります。自閉児のその日の状態を瞬時に観察し、保育者がゆとりを持って共感を取り入れる触れ合いが重要になります。
・ 自閉児が意欲的に取り組める環境・教材・仕掛けを工夫する
七夕の行事で踊りの場面で、他児は曲に合わせて上手・下手・中央などで演技をするが踊りに対して興味なくフラフラする場合があります。そのような時、船や車の小道具を使って乗せる事を考えて、例えば旗を持つ、ライトを持つ、楽器を持つことでじっとしている演出をします。そこには忍耐したり、自分から関わったり、持続的な行動をとることができます。
・ 自閉児は食事で何故食べないか
給食で新しい食べ物が出た場合に何かという不安が見られる場合があります。また、食べ物を食べたいという意欲が乏しいこともあり、保育室の中に一緒に食べたくなる先生や友達をどのように配慮するかも大切になります。食べる時の・舌触りが嫌い・のどごしが不安・味に敏感・匂いが合わない・食べ物の温度が冷たい・熱い、見た目の状態が嫌い・自分にとって嫌いな色の食べ物で食べたくない。唇や舌の機能の不器用,噛みわける能力が育っていない、取り込みが多すぎて噛めないことも配慮します。
当然、水分を多くって食べる量が少なくなる子もいます。大きな器に見た目が少しなら食べるが自分にとって多すぎる感覚だと食べない場合も見られます。
このような食事に対して、個人差を把握して「チューするだけでいいよ」「今日は匂いを嗅ぐだけでいいよ」「○○まで食べるだけでいいよ」といった働きをして食べられた喜びを味あわせたいものです。
・ 言葉として発語 言いたくなる言葉を見つける家庭と協力することがもとめられます。 嫌な事をされる時「ダメ」バスに乗りたい時「バス乗る」 「ちくちくしようか」というと「もう一回」と言う言葉がでるように状況に合わせた場合を見つける眼が必要になります。次の行動をしたくない時「トイレ」と言う言葉を発してやりたくない事を逃れるなど使い分けていることを判断する大切もあります。
汽車の本を見たい時「sl見たい、汽車」と言うこだわりを利用する保育や情緒が安定している時、自分は出来ているから「大丈夫」など自分を落ち着かせるときに使う言葉など、次第に環境に慣れてくると様々な能力を通して発達していることを見つける眼が保育者には求められます。保育者として自閉児が話す自信を見つけること、そして、自分で話す・しゃべれたという感覚を味あわせたいものです。そのためには、保育者が「聴き上手」としてしゃべれたね、言葉になったね、○○言えたねと言った温かい雰囲気を作る事が重要となります。
「話しは聴いてくれる人がいるから話したくなる」こんな保育を自閉児のため園全体で作りたいものです。
園全体で自閉児を含めた一人ひとりの発達「自我能力・困難を乗り切る力と主体性」を大切にする教育を身につけさせたいものです。
当然、養護に包まれた教育として、発達を身につけさせる教育する前に、大人が自閉児の命を守り、情緒の安定を図り、生理的要求を満たし、保健衛生的な環境を作る、大人がする養護を大切にしたいものです。