東海学園大学 飯田 和也
保育者養成校を卒業してすぐには本当の保育のプロにはなれません。しかし、保育のプロを目指して毎日保育実践する事が求められます。
保育のプロとは、1に保育者として○○の保育をしたいという保育の目標を立てることが重要です。2には、言葉だけでなく実践して少しでも目標に近づけ乳幼児を愛した保育の結果を明らかに見せることです。3には、目標のために毎日こつこつと努力で成功「結果」をつかもうと乳幼児を愛する持続力を持つことです。4には、保育の中で人の嫌がるようなことでも積極的に行動する能力を持つことです。5には、保育の奥の深さを見つけ、自分の保育観を信じる力を持つことです。6には、自己点検・評価をとおして常に乳幼児を愛するために改善しようとする謙虚な保育態度を持つことです。
1のように保育のプロとなろうとするためには、目標として何を大切にしたいか明確にする事になります。ここで重要な事は、目標として主語は子どもと言えます。大人が主語にならないことであり、自分が客観的に保育の世界にいる事を見直したいものです。
何故保育者になったか、具体的に保育の目的である「子どもの最善の利益のため」と言うことを忘れないで立案したいものです。子どものためといいながら自分の保育技術だけを高める事ではありません。当然、給料とかお金を手にすることだけが目標ではありません。乳幼児の命を守り、情緒の安定を図り、園児が自分で生きる力として大切にしたいものを目標として具体的に立案し言葉に表すことが保育のプロとしての第一歩になります。
例えば、「養護に包まれて教育がある」「日常保育のなかで発達を身につけさせたい」「友達同士のかかわりから思いやりのある態度を育てたい」「日本だけでなく世界に通用する生きる力を乳幼児に身につけさせたい」「自分が働いている保育の理念を理解し目標の中にある○○を子どものために深めたい」など具体的な乳幼児を愛する目標を立てられる保育者です。
私の場合は、乳幼児の発達を重視します、しかし、そこには乳幼児への愛があることが基本としています。
自己点検・「目標があるか」評価・「乳幼児を愛する具体的な目標であるか、立案の根拠は」
2のように、上に立てた目標を言葉だけに終わらないで乳幼児に発達を身につけた結果を残すことです。保育実践の一年が終わったとき、点検・評価し結果として考えと実践が結びついていることです。
目標としていた事が乳幼児の行動に結果として身につけたことを具体的な成果として出すのが保育のプロです。指導計画立案ができている事が条件に結びつきます。
縄跳びの例としてただ上手に縄跳びを飛ばせるだけでなく、最初は跳べなかった子が最後は前跳び・後ろ跳び・あや跳び・交差跳びなどを自発的にかかわる意欲・友達に邪魔しないで約束を守る態度・自分で工夫して考えた知的発達・跳んだという充実感から身のこなしの使い方を身につける態度を結果として残す発達支援「保育実践」をすることになります。
このように様々な発達の方向性を抑え、発達過程を考慮した保育場面で園児が自分で困難を乗り切る主体的な生き方を身につけた結果を具体的に残すことです。
私の場合は、乳幼児が「困難にぶつかっても自分で乗り切る力」と「自分から○○する」主体性を身につけさせることを点検・評価します。最後の別れのときに発達を身につけさせて、将来困難を乗り切る力や自分から挨拶したり、人に言われないで片付けたり、五領域で偏った発達でなく身につけることが出来たかを評価します。主体的かどうか出来ていない場合には、立案と環境と支援を改善します。
3のように、毎日子どもの姿を観察し、自分の保育実践を立案し、結果がでるように様々な視点や信念を信じてこつこつと保育実践を努力することです。
自分の信念を信じて毎日努力する事ですが、基本は子どもが大好きでないと続きません。子どもの行為が可愛いと思えるかも大切といえます。「好きこそものの上手なれ」と言う言葉があるように最初はうまく出来ないが続けることで次第に上手になります。保育が好きで体力がないと保育のプロは続けられません。
記録にしても、毎日子どもの姿を観察する時、乳幼児が動いたり、じっとしている時を見つめた時に可愛いなあと思って観察できることです。毎日、仕事だから仕方ない・ノートを造らなければならないからと義務だけでは限られた観察しか出来ません。時間も体力も知識も幅広く持っていて続ける事が可能になります。それには保育者として子どもが大好きで保育が楽しくないと続ける力が湧いてきません。
私の場合は、個人ノートを四月に作成し、出来るだけ乳幼児の言葉を聞いたり、友達とのかかわりの中で見ているときの消極的な場・積極的な場などを記録します。
また、描いた絵の飾ってあるのも記録します。一緒に遊んだり紙芝居をしたときにどのように反応するか、歌わせている時にどのように口を動かせているかを観察しながら伴奏したり、リトミックでの反応に対してチェックしたりします。このようなときに多くのことを要求しない・一つで良いよ・失敗しても良いよといった笑顔を示す努力をして一年間出来るだけ良いところを見つける努力をしています。
又、手首にキティー・アンパンマン・プリキユア・仮面ライダー○○を描いたりして順番・言葉の使い方・健康かどうかチェック・母親とのやり取り等を観察し記録して一人ひとりの発達を観察し改善に結びつけます。
4のように、人の嫌がる事を自分から行動する。掃除や片付けや次の日の準備など、保育場面は自分にとって都合のいいことだけではありません。子どもができなかったと泣いていたり、取られた・いじわるされたと怒っていたり、やりたくないと嫌がっている場面や先生○○してなどの要求が見られます。そのようなとき、自分の都合でかかわらなかったり、面倒だからやろうとしないと言う態度でなく子どもの発達のためには、今、必要な保育実践をするといった態度が保育のプロには求められます。
園児が甘えて泣いているのに受け入れる必要がないと無視したり、友達におもちゃを取られて悲しいと言えずに泣いている時に聞いてあげたり、喧嘩して相手のことを受け入れる事ができなくて叩いてしまいさらに喧嘩となり、怪我をさせたり、怪我をしたが自分の心を伝えられなくて悔しい思いをしている事があります。
そのような時に言葉で言い表す事ができない悔しさを代弁してくれる先生になってあげて両方に道徳的発達の思いやりを育てることが求められます。
また、保育の中で保育室や園庭などで命を守るため、さらには病気にさせないために人が見ていないところでも清潔にする、道具を片付ける、水道の水の出しっぱなしがあったら蛇口をしっかりと止めておく、くもの巣がはっていれば取り除いておく、花壇の草を人知れずむしりとっておく、ほこりがあれば清潔にしておく、これらは養護に包まれて教育があるという考えに基づいているといった信念でもって人の嫌がる事でも積極的に行動する事が保育のプロとなります。
私の場合は、出来るだけ保育室の掃除・園庭の石ころや草取りなどの整備・くもの巣をとること・道具の片付けなどをして「掃除は命を守り、病気にならないためにしているのだよ」と園児や先生に伝える事で養護の基本だという事を伝えています。
5としては、「保育は難しいでなく奥が深い」という言葉があります。難しいと感じて逃げるのでなく,止めることなく深めようと言う意欲を持つのがプロです。
自分の知識の未熟さを棚に上げて自分の実力は行き止まりとなったと感じると終わりになります。いままでの自分だけ考えた視点でなく、周囲の人の考えや方法を謙虚に受け止めることでさらに前進するのが大切となります。
自分の保育方法が一番・自分の考えが最高・自分以外は間違っているなどと他人の理論や方法を受け入れない、聞く耳を持たない、独りよがりの自己満足な生き方では保育の本質を見つける力となりません。保育は時代によって地域によって、環境により乳幼児の発達は異なる場合が見られます。
昭和の時代の保育の考え方、平成になってからの保育の変化、そしてこれからの保育制度の在り方など変化しています。このような保育観の変化に適応する能力が保育のプロとして求められます。昭和の保育の指導計画は子どもの活動・・物的環境・・援助・配慮といった様式でした。
それが平成時代の指導計画は、目標・・ねらい・・内容・・環境構成「物的・人的・雰囲気」・・予想される活動・・援助・配慮といった様式になりました。このように時代によっても大きく変容している事で保育観が異なっています。それに対応する柔軟さと乳幼児の発達のためと言う保育観を持つ事が大事な条件となります。
私の場合は、昨年と違いさらに知識も技術も保育の質を高めようとする自分を見つけること。さらに保育の視点が深まっている事を自覚する生き方を求め続けること。毎週・毎月新しい自分発見を乳幼児から教えられる喜びを味わうことと言えます。
6としては、常に自己点検・自己評価して改善に努めることです。保育のプロは常に乳幼児の発達を愛するための改善する力を持ち続けることです。
目標が子どもの発達を捉えていたか、一年間の保育実践の結果が乳幼児の発達に役立っていたか、子どもを愛する努力を持ち続ける事ができたか、自分の信じた考えが正しかったかといった視点を見直すことです。
自分ひとりで評価するのでなく園長や主任、又、仲間から評価される事といえます。そのためには指導計画の点検・評価を受けること、公開保育をして保育実践での環境構成や発達支援の癖を見てもらうことも重要になります。また、周囲にいる保育者から日常のクラスの子どもたちの態度を客観的に教えてもらう事で発達の偏りを評価できます。園内研修で発表し評価をしてもらう事も重要といえます。
保育のプロと呼ばれるためには、乳幼児を心から愛する態度と自分を高めようとする隠された努力が求められます。
子どもの発達については保育の基本130にて「五領域」「おおむね○歳」「子ども同士の発達」を参照していただければ幸いです。