二歳児の言葉の援助は、間違っていてもいいよ、正しい発語でなくてもいいよ、はっきり聞こえなくてもわかるよ、真似してもいいよ、能力あると信じているからね飯田 和也
職員室の隣のクラスが二歳児になりました。最初は「うんうんお母さーん」「ママ」「××」と声にならない泣き声の大合唱でした。そのうち一人・二人と職員室を担当者と一緒に泣きながら、また、落ち着いてのぞきに来るようになりました。
その中の一人の男の子と目があいました。すると不思議そうな顔をして近づいてきたのでした。「かわいい顔して人懐っこい子だなあ、」とニコニコと笑顔でみていると、寄ってきて「うふんぅふン」と鼻を鳴らしました。 ニコニコとみていると何か、嬉しそうに鼻を鳴らしてクラスに戻っていきました。
次の日もまた、職員室にきてうふうふとまた鼻を鳴らして帰っていきました。そして、次の日も体を寄せてきたので右手の人差し指にボールペンの黒色で象の鼻の形と手の甲に象の耳の形を描くと声ははっきり出ないが「ふんふん」と鼻声になるのでした。
そして満足そうにクラスに帰っていきました。次の日も職員室の私の机に寄ってきて手を差し出してふんふんというのでまた右手の人差し指に象の形を描くとうふんうふと言って何日も象の形を描くと手を出すのでした。
毎日・毎日、一週間以上過ぎると「ぞう」と言葉が出ました.「ゾウ」と言われて「ゾウを描く遊びが続くのでした。その後、しばらくして夕方母親が迎えに来た時に、象を見せながら「誰かいてくれたの」と問いかけると初めて「せんせい」という言葉が出るのでした。この「先生」という言葉を発することを覚えると私の顔を見ると「せんせい・せんせい」と大きな声で呼ぶのでした。部屋の近くを歩いているのを見つけると「 せんせい」と叫ぶようになりました。
しばらく「せんせい」という言葉が続いた後、周囲の二歳児の中で「えんちょうせんせい」という言葉を発する子を聞いて、自分も「えんちょうせんせい」と真似して言えるようになりました。 右手だけでなく、左手の二の腕に象というので違う形の象を描くと「右手と左手に書いてある象を指さして「イッショ」という言葉が出るようになりました。
このように正しい言葉が出なかった子が「ふんふん」「ゾウ」せんせい」「イッショ」というように発語が伸びてくるのは「うんうん」という言葉を受け入れてくれる人がいる、そして、訂正をしないで自分が発していることに自覚して話すことに対して自信をもったことが最初でした。
何日も「ぞう」という形を見て、象を認識して象と言える自信を持たせてくれる「失敗してもいいよ・」「はっきり言えなくても大丈夫だよ。という心で見守っていたからと言えます。
二歳児は「まねるは学ぶ、学ぶは想像力そして創造力」といった知的発達・模倣の始まる発達があり、自分たちを優しく見守り、能力があることを温かい雰囲気で知らせることで発語に結びついたと思われます。言葉は聞いてくれる人がいるから話したくなる。失敗しても受け入れてくれる人がいるから伝えたくなる。正しい発語でなくてほめてくれる人がいるからしゃべりたくなる。周りに真似してもいいよという温かい愛のある雰囲気があるから言葉は伸びる。「人は環境との相互作用で発達する」という大切な幼児教育の基本を教えられました。