幼稚園や保育園と言う集団生活に初めて体験する子どもにとって、家庭の環境で自由になる行動から一変した生活になります。
全てが異なり戸惑いの連続になります。靴を履くにも今まで自分で履かなくても母親や祖父母が履かせてくれていた。服を脱ぐ時少し脱ぎづらいと感じて立ったままでいるとさっと手が出てきて脱がせてくれていた。食べる時も自分でスプーンを持って食べなくても母親が「はい・アーンして」と言うので黙って口を開けて待っていると、「ハイ」と食べさせてくれていたので口を開けて待っていればよかった。
少し歩いて疲れると「ちょっと泣いて」手を出すと「ハイ・ハイ」と言ってすぐに抱いてくれたり、おんぶしてくれていた。
ちょっと泣くだけ、少し甘え声をだすだけ、それでもやってくれなければ大声で泣き、周りの人に聞こえるように泣き叫べば「大丈夫・大丈夫」「泣かなくて良いの」「まだ小さいのに」「可愛いからね」と言って抱いたり、おんぶしたり、手をかけてくれていた入園前の行動でした。
それが幼稚園や保育園に入ったとたん、靴が脱げないと全部を助けてくれない先生がいて「自分で○○までやりなさい」と言って見守っている。
かばんのチャックが開けられないと優しく「・・チャン、ここ持ってやってごらん」と言って全部やってくれないが教えてくれる先生がいる。
給食の時、家庭と違った味や匂い、冷たさや温かさ、硬さや柔らかさ、色や形が出て「どうしようかな」と見ていたり・考えていると「チュするだけでいいよ」「今日はここまで食べるだけで良いよ」と温かい言葉をかけてくれる先生がいる。自分には「できない事と思っていたが少しだけできる」と感じさせてくれる、ちょっとやってみようかな、そんな気持ちになった初めての集団生活になる環境です。
家庭では「早くしなさい」「早くしないと遅れるよ」といつもせかせられている環境。「全部食べないと大きくなれません」「きちんとできないとだめ」「きれいに全部片付けないと○○やらせないよ」といった言葉が飛び交っていて全てがきれいに、完全にできるまでを押し付けられている環境といえます。
また、「ハイ・おいしいからこれ食べて」「面白いから○○やって」「危ないから乗ってはだめ」「汚いから砂さわってだめ」「悪い子だから一緒に遊んでダメ」禁止句が多くて自分から動く事ができない環境。
このような環境では自分で様々な事柄や人とのかかわりで選ぶ事・見つける事・考える事・工夫する力など自分で○○すると言う行為が少なくなります。
将来、困難に出会った時に乗り切る力に結びつきません。また、「おしっこ失敗するからオムツにしていてね、パンツ濡れるとお母さん洗濯が大変だからおしっこ何度も行きなさい」と起きてすぐおしっこは・ご飯食べてすぐおしっこは・園に行く前すぐおしっこは・園についてからすぐおしっこ行きなさい」と言われ続けている環境となっています。
そこでは、いつ自分がおしっこをして良いか自覚する前に神経質になる環境となっています。子どもは失敗を恐れ、少しの事でくよくよ悩み・不安感を多く持つ生き方を身につけてしまいます。
家庭で自分から行動しづらい環境と集団生活で模倣したり・自分から遊ぶ・考える環境となって異なっている事を母親として理解したいものです。園では「早くしないとだめ」と言わなくても周囲がルールを守って行動しているので言われなくて真似したり、自分で気づく環境になっています。
子どもが子どもをほめ、愛されている温かい雰囲気の環境をいっぱい味あわせてあげたいものです。ここで失敗してもいい・遊んでもいいという感覚になった環境の時に自発的な行為となります。 園長 飯田 和也